監督:ミルチョ・マンチェフスキー
キャスト:
ジョセフ・ファインズ、デヴィッド・ウェンハム、アンヌ・ブロシェ、ニコリナ・クジャカ
エイドリアン・レスター、ローズマリー・マーフィ
製作:2001年、イギリス/ドイツ/イタリア/マケドニア
2000年、ニューヨーク。古いアパートに空き巣に入った黒人青年エッジ。金目の物は見つからずにいた時、部屋の住人である老女アンジェラと会ってしまった。しかも、アンジェラの手には年代物の銃が・・・。
しかし、アンジェラは警察に通報せずに、なぜかエッジに昔話を語り始めた。
それは、100年前。カウボーイとして生きていたルークとイライジャという兄弟の物語だった。
Comment:
老女と青年の奇妙な友情と同じ女性を愛した兄弟の物語。
現代のニューヨークと100年前のアメリカ西部、パリ、マケドニアを舞台にして、交互にストーリーが展開していきます。
現代のニューヨークでは空き巣に入った黒人青年エッジが老女アンジェラの話を無理やり聞かされながらも次第にその話に興味を示していきます。
しかし、エッジには明日までに8000ドルもの大金を警官でありながら裏では取立て屋という男女2人組に返さなければ殺されてしまう運命にいました。
アンジェラの話を悠長に聞いているわけにもいかず、立ち去ろうとするエッジでしたが、アンジェラから貰った1枚の金貨とアンジェラの話に登場する賞金首「教師」の賞金1万2000枚の金貨が重なり、もしかしたら、この部屋のどこかに大量の金貨が眠っているのかもと考えるようになります。
そして、アンジェラの話の続きが始まります。
100年前のアメリカ西部。カウボーイとして生きるルークとイライジャは娼婦リリスを愛してしまいます。
銃の名手で人気者であるルークに対し、奥手で聖書を引用した言葉を好む物静かなイライジャ。そんなイライジャが初めてルークに対抗心を燃やしました。
そして見事、イライジャがリリスを射止めて結婚するのですが・・・。
現代と過去。どちらのストーリーもしっかり練られていて見応えがありました。現代では次第に心を通わすエッジとアンジェラを、過去ではルークの後悔の旅とイライジャの復讐の旅を繊細に描いています。
ルークの旅はパリからマケドニアへと流れていきます。当時、マケドニアではトルコ軍によるマケドニア住民への大量虐殺が行われていました。この作品では、人を人として思わないトルコ兵の残虐さが描かれています。ルークは盗賊とともにマケドニアの先導者「教師」の首を獲るために賞金稼ぎとなって乗り込んでいきます。
盗賊、マケドニア人、トルコ兵。人はこんなにもためらいなく人を殺せるのでしょうか。悲惨な光景に直視できないシーンも多々ありました。
そして、人が次々と死んでいく中で生まれるマケドニア女性ネダの子・・・。生と死が共存する衝撃的なシーンでした。
イライジャ役にはジョセフ・ファインズ。
ルーク役にはデヴィッド・ウェンハム。
兄弟のようには見えませんでしたが、同じの女性を愛した苦悩をそれぞれが異なる感情で巧く表現していたと思います。でも主役はジョセフ・ファインズよりデヴィッド・ウェンハムだと思いましたけどね。
アンジェラはイライジャからルークのことを知りました。でもルークの考えていたことまではイライジャも知らなかったはずです。そんなルークの話を思い出話のように語るアンジェラ。
アンジェラにとってルークは空想上の憧れの人だったのかもしれませんね。1万2000枚もの金貨があれば、もう少し裕福な暮らしもできたはずなのに、あえて使わず隠して置いたのは、ルークと繋がっていられる唯一の存在だったからなのでしょう。
でも、最後にエッジが語ったルークの話は、本当にエッジが付け加えた話なのでしょうか・・・気になります。