監督:コリーヌ・セロー
キャスト:
ミュリエル・ロバン、アルチュス・ドゥ・パンゲルン、ジャン=ピエール・ダルッサン、マリー・ビュネル
パスカル・レジティミュス、エメン・サイディ、ニコラ・カザレ、マリー・クレメール、フロール・ヴァニエ=モロー
製作:2005年、フランス
昔から仲の悪い社長の長男ピエール、教師の長女クララ、無職の次男クロード。母が亡くなり、遺産相続のため公証人へ相続内容を聞きに久々に3人が集まった。しかし、その内容を聞いて3人は驚愕する。
「遺産相続の条件は、聖地サンティアゴまでの1500キロの巡礼路を、兄弟で一緒に歩くこと。」
嫌がる3人だが遺産のため、渋々承諾するのであった。
巡礼当日、ガイドのギイを筆頭に、謎の女性マチルド、卒業記念として参加するカミーユとエルザ。カミーユの同級生であるアラブ系フランス人サイッドとメッカを目指すと勘違いしている失読症の友人ラムジィ。そして、あの険悪な3兄弟が参加することになった。
何やら問題のありそうな面々で、9人の巡礼の旅が始まろうとしていた。
Comment:
フランスから遠いスペインのサンティアゴまでの道のりを徒歩で巡礼しながら人のふれあいを描いた作品。
9人全員が主役のような作品でした。
まず、仲の悪い3兄弟。裕福な暮らしのためか自分が動くことを極端に嫌う長男ピエール。教師としてのストレスなのか、それともお金に困っているためなのか、いつも険しい表情の長女クララ。何もせずたまに会う娘にもお金をせびる無気力な次男クロード。そんな3人が仲が良いわけがありません。久しぶりに会ったにも関わらず、目も合わせい3人。一言話しかければすぐ口喧嘩になってしまいます。度を越すと口だけでなく手まで出してしまう始末。ピエールとクララの壮絶な喧嘩は、本人たちは真剣でも子供の喧嘩ようで逆に笑ってしまいました。
ガイドのギイは3人の行動に困り果ててしまいますが、彼には他にも悩みがあるみたいです。・・・家族と会えない寂しさは、帰りを待つ側も同じということなのでしょうね。でも可哀想なギイだと思っていたら・・・。
失読症のアラブ系フランス人ラムジィは、友人サイッドに騙されてイスラム教のメッカを目指していると勘違いしてしまいます。でもサイッドは目指す場所は関係なく、ラムジィの失読症をこの巡礼中に治してくれる人を見つけたかったようです。恋心を抱いていたカミーユがこの巡礼に参加していたところを見つけたからというのもありますけどね。
そして、ラムジィは何とクララに文字を教えてもらうことになります。初めは断っていたクララでしたが、正直に生きる純朴なラムジィと交流していくうちに彼女にもやっと笑顔が見え始めます。
ラムジィがこの巡礼者の一行に癒しを与えていたようでした。
はたして彼らは聖地サンティアゴへ無事に着けるのか、そして、この巡礼の旅で何を得るのか・・・。
彼らは、お金で買うことができない人とのつながりや助けあう精神を得たのではないでしょうか。
道中で起きるさまざまな出来事が笑いを誘ったり、また、彼らの夢の中の映像がストーリーの間に入ったり、単調な旅路をコミカルかつ幻想的に描いています。
いつも見る景色を歩きながら眺めると、印象が変わるのと同じように、人生を早足で走っている人はちょっとスピードを緩めると、見えなかったものが見えてきますよと伝えているような作品でした。