監督:ラッセ・ハルストレム
キャスト:
ジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオ、ジュリエット・ルイス
メアリー・スティーンバージェン、ダーレン・ケイツ、ローラ・ハリントン、メアリー・ケイト・シェルハート
ジョン・C・ライリー、クリスピン・グローヴァー、ケヴィン・タイ
製作:1993年、アメリカ
アイオワ州エンドーラ。田舎町にある個人経営の食料品店で働く若き青年ギルバート・グレイプ。弟アーニーは脳障害で10歳まではもたないと言われながらも逞しく育ち、18歳の誕生日を迎えようとしている。姉のエミーは母親代わり、妹のエレンは反抗期。兄のラリーは家を出た。そして、町一番の美人だった母親は、17年前に父親を亡くしてから過食症になり、7年前から一歩も家を出ていない。
アーニーの誕生日が近づいたある日、母親から誕生パーティを開くことが提案された。家族みんなでパーティの準備をすすめるが、アーニーはトラブルを起こしてばかりだった。
そして、家族との生活、そして、この町での生活に疲れを感じてきたギルバートは・・・。
Comment:
さまざまな問題を抱える家族の更生と自立を描いたヒューマンドラマ。
ギルバートは家族のことを誰よりも気にかけるあまり、自分の夢や希望を持てずにいました。しかし、トレーラーハウスで旅を続ける自由奔放な女性ベッキーと出会い、ギルバートの心にも変化が起きはじめます。
しかし、ベッキーから自分の思いや希望を問われたときにも、やはりギルバートは家族のことを第一に考えてしまいます。そして、自分は「いい人間になりたい」と・・・。傍から見ると「とてもいいひと」に見えるギルバート。でもギルバート自身は、自分はそんな人間ではないと言っているかのようでした。なぜなのでしょう。
ある日、ギルバートは言うことを聞かないアーニーに対し衝動的に暴力を振るってしまいます。動転したギルバートは家を飛び出しそのまま町を出てしまいます。
もしかしたら、ギルバートにはこの町から出てベッキーのように自由に生きたいという願いがあったのではないでしょうか。
兄のラリーも家を出ています。ギルバートも町から出て行けたのです。ただ、今まで田舎町でしか暮らしていなかったことで不安を感じ、家を出る「勇気」が持てず、その理由として、過食症の母親と障害を持つ弟のためだからと精一杯努めてきたのではないでしょうか。本当に「いいひと」なギルバートだからこそ、言い訳として介護している自分が偽善者だと思い込んでしまい、そんな意味も踏まえて「いい人間になりたい」とベッキーに答えたのではないでしょうか。
ストーリーの結末は、家族にとっては悲しい結末でしたが、母親が自力で2階に上がったことで、子供たちに「希望」を与え、さらに自立への「きっかけ」と「勇気」も与えていたように感じました。
悲しい結末なはずなのに、ラストシーンがハッピーエンドのように感じたのは、そこに理由があったのかもしれません。
ギルバート役にはジョニー・デップ。家族を支える大黒柱として逞しい心持ち、そして幸せのために苦悩する繊細な心も合わせ持つギルバートを好演しています。
アーニー役にはレオナルド・ディカプリオ。障害を持つ少年を見事に演じています。彼もまだあどけなさが残っていて時代を感じさせますね。
監督はラッセ・ハルストレム。まだ、監督の作品を観ている本数は少ないのですが、
「家族と自然」
この2つのテーマが監督のすべて作品の中にあるように思えてきました。
人生の中で立ち止まってしまったとき、そっと背中を押してくれるような作品でした。
第19回LA批評家協会賞 ニュー・ジェネレーション賞(レオナルド・ディカプリオ)
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