監督:ファティ・アキン
キャスト:
ビロル・ユーネル、シベル・ケキリ
カトリン・シュトリーベック、グヴェン・キラック、メルテム・クンブル
製作:2004年、ドイツ/トルコ
最愛の妻カタリナと死別し人生に絶望したジェイトは、酒に溺れ、運転中に追突事故を起こし自殺を図る。一命を取り留めたジェイトだが、心の病は癒えないでいた。ある日の診察後、ジェイトの前に突然若く美しい女性シベルが声をかけてきた。
「トルコ人ね。私と結婚して。」
シベルもまた自殺未遂で病院に担ぎ込まれていた女性だった。シベルの家庭は信仰心が厚く、自由を謳歌したいシベルにとっては厳格な父のそばにいることが何よりも苦痛だった。そこで、シベルは自殺未遂を起こして家から病院へと逃げ出し、さらに同じトルコ人なら父の承諾も得れると思いジェイトと偽装結婚しようとしたのだ。
事情を知ったジェイトはシベルと偽装結婚してしまうのだが・・・。
Comment:
愛を見失った男と愛を知らない女が真実の愛に気付くまでの攻撃的かつ切ないラブストーリー。
2人のあまりのキレまくりに、はじめはどうなってしまうのだろうと不安になってしまいました。
特にジベルがレストランで再び自殺未遂を起こすシーンは「このシーンを映画にしてもいいのか?」というくらいに衝撃的過ぎます。
堕落したジェイト。結構な年齢なのに人生をやり直す術も知らず、廻りの人間が心配していることにも気付きません。
無二の親友のセレフはジェイトのことを誰よりも心配している男。彼がいなかったらジェイトは本当に人生を棒に振ることになっていたでしょうね。
身体だけの関係であるマレン。ジェイトとカタリナの旧友でもある彼女はジェイトのことを昔から愛していたのでしょうね。ジェイトもきっと気付いていたはずなのに・・・なぜシベルと偽装結婚したのでしょう?
シベルはその若さからなのか、それとも今まで抑圧された暮らしから解放されたからなのか、本当に危なっかしい性格です。気に入った男がいれば、衝動に任せて男に身体を許し、ドラッグに溺れる。そして、その危険かつ自由奔放な行動にジェイトの心が揺れ動かされます。シベルにカタリナの面影でも見たのでしょうか。
しかし、ある大事件が起きて2人の関係が一変・・・2人は離ればなれになってしまいます。
ジェイトはシベルへの愛に気付き立ち直ろうとするも、ますます奈落に底に落ちていくシベル・・・。
そして、2人が再会するとき・・・。
邦題の「愛より強く」。2人は全編を通して「愛」を強く信じ、そして、迷います。その「愛」より強いものとは・・・。固い絆で結ばれた2人の愛でしたが、その愛よりも強く「生きる」ということをジェイトとシベルは会わずとも誓い合ったのではないでしょうか。ジェイトは残りの「人生」のために。そして、シベルは今ある「小さな幸せ」のために。
心が張り裂けるような重いストーリーでしたが、大きなシーンの切り替え時に流れるトルコ音楽とイスタンブールの景色が癒してくれているようにも感じました。
第54回ベルリン国際映画祭 金熊賞