監督:ジャック・オーディアール
キャスト:
ロマン・デュリス、ニールス・アルストラップ、オーレ・アッティカ、エマニュエル・ドゥヴォス
リン・ダン・ファン、ジョナサン・ザッカイ
製作:2005年、フランス
不動産の裏ブローカーのトムは、仲間と共に悪質な手口で取引を繰り返す日々。そんなある日、懐かしい人を見かけた。少年の頃、亡くなったピアニストの母と共に仕事をしていた恩師だ。トムは恩師に挨拶すると、恩師からオーディションを受けてみないかと誘われた。実はトムの昔の夢はピアニストだったのだ。昔の記憶が甦り、その気になったトムはオーディションを受けることにする。
同じ裏ブローカーとして働く父から馬鹿にされながらも、練習に励むトムだったが、10年もピアノから遠ざかっていた手は思うように動かない。そこでトムは音楽学校に通うことにしたが、現在のトムの状況と性格から折り合いがつかずあきらめてしまう。しかし、その学校に通う青年から知り合いにピアノの個人講師がいることを聞き会いに行くと、その人はフランス語が話せない中国の女性だった。
言葉が通じない2人だけのレッスンが続くも、次第に上達していくトムだったが、同時に裏ブローカーを辞めることができない状況に悩んでいく・・・。はたして、トムの夢は叶うことができるのか。
Comment:
1人の青年の夢と現実を描いた作品。
トムは口は悪いけど、両親思いの優しい息子だなぁというのが印象に残りましたね。
汚い仕事はすべて息子に任せる父。完全に絶縁してもおかしくないはずなのに、何かと心配し助けてしまうトム。ピアニストを目指したのも母の影響があったのでしょう。きっと、10年前は幸せな家庭だったのかなぁと描写が無くても感じてしまいます。
母の死後、10年間は完全に闇の人でしたが、恩師やピアノ講師の中国女性に会い、そして何よりも再びピアノに向き合えたことでトムの心はピアノの上達と共に次第に晴れていきます。しかし、愛する女性を家に呼んでもピアノのことは一切触れず、自宅で練習するときは誰にも邪魔されずに集中している様子から、トムにとってピアノは何よりも大切なもの、誰にも侵されたくない神聖なものだったのでしょう。
オーディションは、やはり、前日の夜の影響が大きかったのかぁ。
ピアニストとしての夢と裏ブローカーとしての現実。光と闇がトムの心を不安定にしてしまったのでしょう。
2年後のラストシーン・・・トムのその後は知りたかったけど、復讐シーンは必要なかったかなぁ。
監督はジャック・オーディアール。前作「リード・マイ・リップス」では話すことができない女性との交流を描き、この作品では同じ言葉を話せない女性との交流を描いています。
やはり、中国語は字幕なしですか・・・どんなことを話していたのかなぁ。
第55回ベルリン国際映画祭 銀熊賞(音楽賞)