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●『紫式部ひとり語り』/山本淳子(角川ソフィア文庫)
2024年のNHK大河『光る君へ』が始まりました。
私がNHK大河ドラマを見るようになったのは実はかなり最近のことで、きっかけは武道を習い始め、『軍師官兵衛』(黒田官兵衛:岡田准一主演)のDVDを見たのが始まりだったと思います。
リアルタイムで見始めたのは2020年の『麒麟がくる』から。そこから『青天を衝け』・『鎌倉殿の13人』・『どうする家康』と続き、今では毎年楽しみにするようになりました。
紫式部の幼少期である「まひろ」を演じた落井実結子さん、可愛らしかったなぁ。もはや孫を見るジイジの視線ですね。紫式部は2~3歳の頃に母を亡くしているはずで、「ん?」と思う部分もありましたが、「そう来たか!」と・・。
予告を見ると次回は早くも、成人した「まひろ」として吉高由里子さんが登場するようで、来週も楽しみです。
昨年の夏。『源氏物語』を読みました。
そして年末には「源氏物語」と「紫式部」の関連本が本屋さんの店頭に並びましたから、この本も昨年の年末に読んだ本です。
少し変わった構成です。「ひとり語り」という題名にもある通り、紫式部の「一人称での独白」という形をとっています。
しかし全くの創作ではなく、研究者でもあった著者が、紫式部をめぐる歴史資料や、国文学の研究成果に基づいて熟考の末に、敢えてそういう形式にされたのだそうです。
文庫本「あとがき」には、こうあります。
私は紫式部に伝えたい。あなたの作家としての人生は、千年後にまでその作品が読まれることで、今の世にも生き永らえている。だから私もあなたの思いを、一人でも多くの人に伝え続けたい。
そんな想いが全編に溢れているのでしょうね。本当に紫式部自身が「ひとり語り」をしているかのようでした。
なぜ『源氏物語』を書こうと思ったのか。紫式部は何を想い、何を考えたのか。私の中ではかなり『源氏物語』への印象も変わりました。
正直、当初は平安時代の「恋物語」で女性が好むものと決めつけ、全く興味はありませんでしたし、主人公の「光源氏」に対しても、ただの「イケ好かない男」としか思いませんでした。^^;
しかし浮かび上がって来たのは人間的な姿でしょうか。
紫式部自身が、幼い頃に母を亡くして母親の愛情を知らずに育ち、姉を亡くし、結婚後3年で死別し、家柄や父親の赴任などの政治的なことにも翻弄されて、女性であるが故の「この世」の無常を、これでもかと言うくらいに味わって来ました。
「どう生きればいいのか・・」
紫式部は当初は『源氏物語』を長編にするつもりはなかったそうで、著者の言葉をお借りすれば、紫式部はそこに自分を投影し、様々な要因で身を縛られる当時の女性達の「心」を書いた。
しかし書き進めるうち、光源氏にも彼なりの現実があり、「もがき」があったはずだと、そこを突き詰めていった結果、長編の『源氏物語』になっていったようです。
そんな背景を知ると、ただベタ塗りで平面的だった『源氏物語』が、私の中でもがぜん立体的に見えて来るようでした。
いつの時代も生きるのは大変。
さてこれから。どんな展開になって行くのか。何が描かれるのか。また一年間、自分自身の人生と重ねながら、楽しませていただこうと思います。
本日もお読みいただき、感謝です。