シルクロードの華 | anetaka-blog

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LIVING GALLERY 姉小路高倉-ANETAKA-発信のブログ。
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シルクロードの華


中央アジアの国、ウズベキスタンのサマルカンド。
鮮やかなタイルで飾られたモスクがあり、
そこは「 青の都 」と呼ばれています。
NUSHIはちょうど今頃、首都タシケントからの列車で
サマルカンドに到着した頃でしょうか。
ウズベキスタンでは“スザニ”を中心に探してくる予定
なっているのですが、近年、世界中の愛好家やコレクターが
増え、商業的に作られたものは数あれど、古いスザニは
数も少なく高価なものとなってきました。

『 シルクロードの華 』
と呼ばれる、そのスザニについて少し書きたいと思います。
“スザニ”はウズベキスタンの伝統的な染織品です。
ペルシャ語で“針”の意で、「布を刺す」というウズベキスタンの
語源からきています。 絹地、木綿やウール地に絹糸で
文様が手刺繍されています。 
多くの場合結婚と結びついていて、花嫁が必ず持参する
貴重品とされ、女の子が生まれると、母たちはその日に備え
様々な願を込めてひと針ひと針、手刺繍しました。
伝統は母から娘へと受け継がれ、
女性は物心ついた頃から布を刺すのだそうです。

布地全面いっぱいに刺繍されるものが多く、
文様はそれぞれの集落や民族の証として継承されていて、
子孫繁栄や魔除け、家族の繁栄を願った意匠や色彩。
一番多く見られる意匠が花文様。
写実的ではなくパターン化されたもので、その他、
生命の樹、月を意味する赤い大きな丸型文様など。
家畜の繁殖を願って、羊など動物を象徴とする文様など、
それぞれに意味をもっています。


手刺繍スザニ
20世紀初期のスザニ


ウズベキスタン スザニ刺繍
このスザニは羊の角を文様化したもの。

家族の為に願を込めて手刺繍される労力と技術に関心。
それに豊富な装飾意匠や鮮やかで華やかな
色彩感覚に驚きます。 なにより凄いのは、手間隙かけて
作られたスザニは実用的なものでもあり、
『 用の美 』であること。
スザニは寝具の上に被せたり壁を飾ったり、礼拝用の
敷物やクッションカバーなどに使用されているのです。

『 シルクロードの華 』と呼ばれるのには
乾燥地帯に位置し、その土地は煉瓦造りの家屋で
木々の緑も乏しい褐色の世界。
原色の色彩のスザニは、まるで
砂漠に花が咲いたかのようであるからでしょうか。
また生地全面に刺繍を埋め尽くす、空間を隙間無く
多彩に彩るのが、イスラム固有の美意識なのだそうです。
余白に意味や美意識をみる東アジアとは対極です。

細密でありながらも大らかさがある。
それはきっとひと針ひと針、手刺繍されたからでしょうね。
意匠からも民族の風俗が見える。
伝統的なものでありながら、非常に斬新に目に映る。
女性特有でしょうか、スザニの様な華やかで色彩綺麗な
ものを見ていると、嬉しい気分になるものです。
それもまた“花”を愛でるのと同じです。