私の人生で最も苦手な、いや、はっきり言って嫌いな上司とともに、ジョホールに行ったのである。
その時、私は数年前の出来事を思い出していた。
日本では嫌な思いがあって、海外に出されて、正直ほっとしたのもつかの間。
また、数年間の腐れ縁だ。
彼がジョホールで、何かをやらかしたのは知っていた。
工場に着くと、工場長が社内案内してくれ、私たちは応接室に通された。
その工場はセゴどんの孫が会長をしているグループの一員であり、会長自ら描いたという油絵の写真集をいただいた。
そこに載っていた会長の姿は、セゴどんのような太めではなく、むしろひょろっとした老紳士だった。
絵は優しい。
細川の殿の造る器にも似た印象だった。
クルンテープまでは持っていた記憶があるが、今は見つからない。
私の人生まで変えた上司、なんともはや人だった。
その方の親はセゴどんほどではないにしろ、一部にはかなり知られている人物らしかった。
が、私にとってはセゴどんと比較することさえ失礼なほどのポンコツだった。