【シーズ小説】騙しのテクノロジー | しま爺の平成夜話+野草生活日記

しま爺の平成夜話+野草生活日記

世間を少しばかり斜めから見てしまうしま爺さんの短編小説や随筆集などなど
★写真をクリックすると、解像度アップした画像になります。

10年ほど昔。
小さいながらマジック世界では著名なある会社が、
≪あなたもすぐに超能力者≫
となうって、新製品を発売しようとしたことがある。
が、突如販売中止となった。


この新製品の特徴は、こんな感じだ。

2~3メートル離れたところにカードを数枚置く。
そのうち1枚に触れて、好きなカードを選んでもらう。

それを、目隠ししていた者が、別のカードを額に当て、相手の選んだカードを当てるというものだ。

これはイリュージョンマジシャンがすでに使っていた手法で、原理は簡単である。
遠方にあるカードには、手で触れたことにより微弱電流が発生し、カード内にある部分に遠赤外線が出るようにしておく。
遠赤外線だから、人間には見えない。


一方、超能力者が額につけるカードには、ある周波数発生装置が組み込まれている。
この周波数電磁波が脳の視覚認識範囲に影響を及ぼし、遠赤外線が見えるようになる。




超能力とかイリュージョンマジックとかいうものは、だいたいこれに似た原理を用い、100%選んだカードを当てられるものだった。

プロになれば、額に当てるカードを手のひらに隠したりして、より一層魔術具合を高めた。





だから、日本手品協会あたりが発売に反対するというならわかるのだ。

飯の食い上げになりかねない。


ところが、猛烈に発売に反対したのは日本手品協会ではない。

電磁波宇宙真理研究所とかいう団体だった。

後に明らかになったが、これは、あのオメガ真理を学ぶ会の信者でなる宗教団体だった。


彼らの主張は、電磁波が脳細胞を破壊する危険なものだ、というものである。



が、これは表向きの理由だったのである。


実は、オメガ真理を学ぶ会ではすでに似たものを作っており、彼らの教皇がパワーの証明として信者を騙すのに使っていたからだ。
それがバレては、教皇の権威が失墜する。


新しい信徒勧誘にも支障が出て、新たな資金獲得が難しくなる。

このゲームマシンは、絶対に表に出してはならない。
教皇と科学部長の厳しい指令が飛んだ。


連日の会社前デモに、会社は発売を見送った。






それが、突如販売中止になった真相である。