10年ほど昔。
小さいながらマジック世界では著名なある会社が、
≪あなたもすぐに超能力者≫
となうって、新製品を発売しようとしたことがある。
が、突如販売中止となった。
この新製品の特徴は、こんな感じだ。
2~3メートル離れたところにカードを数枚置く。
そのうち1枚に触れて、好きなカードを選んでもらう。
それを、目隠ししていた者が、別のカードを額に当て、相手の選んだカードを当てるというものだ。
これはイリュージョンマジシャンがすでに使っていた手法で、原理は簡単である。
遠方にあるカードには、手で触れたことにより微弱電流が発生し、カード内にある部分に遠赤外線が出るようにしておく。
遠赤外線だから、人間には見えない。
一方、超能力者が額につけるカードには、ある周波数発生装置が組み込まれている。
この周波数電磁波が脳の視覚認識範囲に影響を及ぼし、遠赤外線が見えるようになる。
超能力とかイリュージョンマジックとかいうものは、だいたいこれに似た原理を用い、100%選んだカードを当てられるものだった。
プロになれば、額に当てるカードを手のひらに隠したりして、より一層魔術具合を高めた。
だから、日本手品協会あたりが発売に反対するというならわかるのだ。
飯の食い上げになりかねない。
ところが、猛烈に発売に反対したのは日本手品協会ではない。
電磁波宇宙真理研究所とかいう団体だった。
後に明らかになったが、これは、あのオメガ真理を学ぶ会の信者でなる宗教団体だった。
彼らの主張は、電磁波が脳細胞を破壊する危険なものだ、というものである。
が、これは表向きの理由だったのである。
実は、オメガ真理を学ぶ会ではすでに似たものを作っており、彼らの教皇がパワーの証明として信者を騙すのに使っていたからだ。
それがバレては、教皇の権威が失墜する。
新しい信徒勧誘にも支障が出て、新たな資金獲得が難しくなる。
このゲームマシンは、絶対に表に出してはならない。
教皇と科学部長の厳しい指令が飛んだ。
連日の会社前デモに、会社は発売を見送った。
それが、突如販売中止になった真相である。