野党が提出した不信任案は、国民向けパフォーマンスのはずだった。
が、時民党内の四ッ木福太連合とそれにアレルギーを示す牛平田奈加連合との反目が激しく、四ッ木福太派は不信任案決議投票を棄権した。
慌てたのは、不信任案を出した茶会党など野党側だった。
パフォーマンスのはずが、絶対多数で否決されるはずの不信任案が可決されてしまった。
選挙には金も時間もない。
焦ったのは茶会党幹部である。
牛平は中韓とも上手くやっていたから、中韓からのお小遣いも期待薄。
こうした事態に陥ったことに関して、自動車連盟などからの資金が豊富だった茶民党党首・大社一考は、
≪茶会党の赤ちゃんめ、切れないノコギリを自分の腹に当てた≫
と皮肉った。
この後の牛平の言動は、鮮明に記憶している。
牛平は落語漫才ではよく取り上げられた人物だった。
よく聞かないと、ウーアーという言葉しか聞こえない。
まさに讃岐の牛だった。
が、その時の選挙では、赤ヘル黒ヘルもテレビに釘付けとなる演説を行った。
そこから発せられた言葉は、どの候補者よりも鮮明で分かりやすかった。
が!
牛平は、演説中に倒れ帰らぬ人となる。
選挙は、弔い合戦となり、時民党が圧勝した。