もしもし、俺だけど。
おお、澄夫か?
ああ、……。
なんか声が変だが、どうした?
昨日から風邪で……。
ゲホッ、ゲホッ。
そうか、最近急に雨が降ってきたりするからなあ。
うん。そうなんだよ。
ゲホッ、ゲホッ。
で、今日はどうした?
あのう、恥ずかしいんだけど、お客様から預かった証券をなくしてしまって……。
ほう、そりゃ大変だな。
で、申し訳ないけど弁償しなくちゃならなくて……。 ゲホッ、ゲホッ。
まあ、そうだろうな。
で、悪いけど、300だけ貸してもらえる?
300?
デカイな。
う、うん。
駄目だ。今そんな金はない。
じゃあ、100万だけでもなんとかなる?
はあ?
なんだ。お前が弁償だかをするのは300億じゃなくて、300万てこと?
う、うん。
バッカヤロウ。
そんなみみっちいことで電話などするな!
私は受話器を置いた。
しかし、なんと情けない。
たった300万ドンパッパ程度で、泣きつき電話とは。
すこし頑張って夕飯を食べたら、1回でそのくらいいってしまうだろうに。
しかし、最近は定食屋バイトにも、株など渡す客がいるのかあ。
世の中、変わってきたものだ。
で、澄夫はサンパウロにいるんじゃなかったっけ。