3年目の秋だった。
ちょうど今頃で、まだギリギリあの能力があった頃のことだ。
今は亡き、多くの方々のマドンナだった方の提案で、教養時代の英語担当を招待しての文化祭があった。
マドンナは、とんでもない金持ちのお嬢様でもあるらしく、かなりの男性陣のあこがれらしかった。
が、申し訳ないが、私はほとんど興味がなかった。 スタイルが良かったから、皆で網地島に行った時はモデルになってもらい、それを朝日カメラだか日本カメラあたりに応募したら佳作入賞し、女の子の間では話題になっていたらしいのだが。
この網地島に関しては、一部日時どころか分単位で、そうなった経緯も含めて記憶をたどれるが、話のメインは皆のマドンナのことではない。
網地島行きは、姫もいらして一夜同じテントで、今やドクター夫人となった方の看病を一緒にしていた。
が、その姫の話でもない。
私に、網地島行きを教えてくれた方の話である。
その人は、私にとってはヴェガのように遠く輝いている方だった。
信じられないだろうが、大学生になる前から顔だけは知っており、1秒で私がダウンしてしまった方だ。
待てよ。
私はいろんな方に、1秒でダウンしてしまう癖があったかも知れないなあ。
しかしなあ、誘っておいて来ないとは。
文化祭で、ヴェガがほの暗い私の部屋に入ってきた。
とは言っても、文化祭での私の星占いの部屋である。
当時は星占いが流行り出した頃で、にわか勉強で信じてもいない星占いを学んだ。
ヴェガがなんのてらいもなく、入って来たのに少し驚き、嬉しくもあった。
星占いには関係もないのに、手相占いもどきもする。
見かけに似合わず、苦労している方なんだなあと思った。
占いに関係ない話もした。
あの時の掌や長い指、一度誘われてダンスした時の細い腰の感覚を覚えていたりするから、やはり私は異常だよ。
そう、夢に舞うてふてふに囁いてみた。
ヴェガには、後に旦那となる方も、一度だけだが、偶然出くわした先で紹介されたこともある。
久しぶりにヴェガが夢に出てきた。
ナガサキクロアゲハに似て、日本人としてはやや大柄ながら、てふてふと舞う姿が美しかった。