【船に関する思い出】足りないの? | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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これは以前記事にしたものの、推敲版です。






三島由紀夫の『暁の寺』で知られる、ワットアルンを訪ねた時のことだ。


ちょっと歩けば、当時はホテル世界一と言われたオリエンタルホテルの船着き場があるのは知っていた。

オリエンタルを定宿としていた三島は、おそらくその船を使ってホテルから暁の寺に行ったり来たりしていたのだろう。


だから、ちょっと歩けば豪華な船があるのは知っていた。

が、それでは面白くない。


そこで私は、ワットアルンの目の前にある船着き場に行き、現地人が通勤などに使う船でチャオプラヤ川を渡ってみようと思ったのだった。


そうそう、私と同年代の方にはチャオプラヤ川というより、メナム川と言った方が分かりやすいだろう。

昔は地理でそう習ったし、地図帳にもそう書いてあった。

しかし、このメナム川という日本語の呼び方は、タイ語で考えるとおかしいのである。 

メナムのメとは母、ナームとは水という意味で、メナームで大河という意味だ。

だから、メナム川とよんだら、大河+川とだぶった意味になってしまう。


蛇足だが、こうしたダブリ呼称は川関係では大変多い。

ちょっと思いつくだけでも、こんなもがのある。

以下は、ほとんどが大河+川とか、川+川のような意味になる。

ナイル川、ガンジス川、リオグランデ川、イラワジ川

その他は忘れてしまったが、著名な川だけでこうしたものが20くらいあった気がする。


話を戻そう。


上の写真にあるように、ワットアルンは川べりに建っている。

その玄関口のようなところに、現地人がよく使う船着き場があった。


2,30人乗り位の舟に、ぎっしりと人が乗っている。

いささか乗せすぎなんじゃないの?とは思ったが、まあこんなものなのだろうとも思った。

万が一転覆しても、その近くはかなり川幅が狭くなっており100mくらいしかない。

波も穏やかだし、もしもの時でもなんとかなるだろう。

そう思った。


船着き場には、料金を徴収しているおばちゃんがいた。


もちろん料金表など無いから、私はとりあえず100バーツを出した。


と、おばちゃんが何か言い始めた。

なんだか分からないが、メダイ(ダメだ)というようなことは聞き取れた。


はて、足らないのかなと思い、ボったくられているのかと思いつつも500バーツを出した。


と、おばちゃんは一層声を荒げて顔を赤くしている。


なんだか分からないので、一旦引いた。


と、次の客の支払いを見て分かった。


なんと、客は1バーツとか10バーツをおばちゃんに渡しておつりをもらっているではないか。


そこで、考えが逆だったと気づいた。


そこで私もポケットをさぐり、10バーツくらいを出した。

今度はおばちゃんは何も言わない。

で、おつりを見てわかった。

それまで知らなかったが、1バーツの下にもまた小さい貨幣があった。

いや、単位としては知っていたが、実際にそういう単位の貨幣は見たことがなかった。


おつりから考えると、船賃は1バーツの4分の1である25サタンだった。



ということはだよ。

500バーツと言ったら、さっき私は2,000人分の船賃を出していたのだ。


そりゃあ、おつりがないって怒るわな。


あとで、そう思った。



現在は1バーツ3円くらいだが、当時は1バーツ10円相当だった。

25サタンということは、3円弱である。

現在だと1円未満の価値だ。


シンガポールでランブータンを買おうと100円相当を渡したらあまりに多く、結局一部は数日後に捨ててしまったことがある。

その時も日本との値段の差に驚いたが、この船賃の安さには大変驚いた。

オリエンタルの船だと、この100倍くらいは必要だったろう。