★これは小説と言うことにします。
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その国では、私は運転などとてもできないなと思った。
黒い服を着た歩行者が真夜中に自動車専用道路を横切るは、高速道路を水牛が走るはで、とても自分のへたっぴ運転では無理だと感じたからだ。
しかし、万一に備えて国際免許だけは取っておこうと思った。
総務の親分に言うと、すぐ取りに行きましょうと言う。
ほう、なかなか動きが速い。
少し感心した。
その親分が言う。
赤いの4、5枚ありますか?と。
そうか。手続きに必要なんだなと思った。
赤いのとは、その国の最高額紙幣だ。
当時の日本円だと5,000円換算相当だったが、これは現地人の平均的給与1週間分くらいになる。
赤いの4、5枚なら1か月分相当だ。
結構かかるもんだなと思った。
役所に行くと、現地人がずらり並んでいる。
何時間待つことになるのだろうか、とうんざりした。
と親分が言った。
赤いの1枚。
はあ?
まだ受付もしてないのに?
と思ったら、親分は行列の前に行って、何やら係官と話して赤いやつを渡した。
私の前の行列は関係がなくなる。
ほう、悪いやっちゃなと思った。
保健室のようなところに連れていかれる。
壁には、日本の視力検査に似た絵がかかっていた。
ここでまた、赤いのが1枚消えた。
試験をするのだという。
はあ、そんな話は聞いてないぞな。
と少し不安になったら、なんのことはない幼稚園児でも合格してしまう試験だ。
係官の指した色が赤なら赤い旗を揚げ、青ならば青い旗を揚げる。
日本の視力検査のCのようなやつもあったが、これの試験は免除だ。
赤いやつの霊力であろう。
素晴らしく優秀な成績で無事合格した私は、次にさっぱり読めない書類にサインをさせられ写真を撮られる。
で、また1枚赤いのが消えた。
この間、約1時間。
明後日には、写真付きの正式な国際免許ができるらしい。
親分が、どや顔で私を見る。
帰りに、近くで一番高級そうな店に入り、親分の好きなものをオーダーさせる。
ここで、やっぱり赤いのが1枚消えた。
はあぁ。
確かに、赤いの4、5枚が必要と言うのは正しかった。
そんな常識もあるんどす。