【報告書】STAP論文 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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世間を少しばかり斜めから見てしまうしま爺さんの短編小説や随筆集などなど
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前回の報告書は、素人には雲の中で霧の話4をされているようで、よくわからなかった。


が、今回の報告書は、ポイントが簡潔にまとめられていて、わたしのような素人にも理解しやすいように思える。


★こういうのも著作権てあるのかな。

もしそうなら、このコピーはまずいですね。

何らかの、法的根拠ある指摘を受けたなら削除します。


★字数オーバーで保存・掲載できないため、結論前半の一部分のみのコピーです。

  

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(調査結果)
STAP幹細胞FLSは、Article Fig.5cの増殖曲線の測定(小保方氏の聞き取り調査による)、同Fig.5j-lのキメラマウス(以下「キメラ」という)作製、 Article Extended Data Fig.8dのメチル化解析、同Fig.8i,jのキメラ作製に用いられた。また、FI幹細胞CTSは、Letter Fig.2f,gおよびLetter Extended Data Fig.2a,bのキメラ作製に用いられた。理研による調査で、STAP幹細胞FLSとFI幹細胞CTSにAcr-GFP/CAG-GFPの挿入が認められたので、これらの幹細胞、以前にCDB若山研で作製されたAcr-GFP/CAG-GFPを持つES細胞FES1、FES2、ntESG1、ntESG2、および関連するマウス系統のゲノムDNA解析を行ったところ、上記の結論が得られた。その根拠は、以下の4つにまとめることができる。
1)Acr-GFP/CAG-GFP共挿入の位置、コピー数、周囲の塩基配列
2)SNPsデータの解析結果
3)次世代シークエンサー(NGS)による解析結果
4)第3染色体と第8染色体の欠失変異
以下、順を追って説明をする。
1)Acr-GFP/CAG-GFP共挿入の位置、コピー数、周囲の塩基配列
表:STAP幹細胞株一覧に挙げた12種類の幹細胞からSTAP幹細胞FLS-Tを除く11種類の幹細胞株、それらの幹細胞が作製された129系統、およびC57BL/6系統のNGSによる全ゲノム解析を行なった。その結果、Acr-GFP/CAG-GFPの共挿入は、STAP幹細胞FLS3、FI幹細胞CTS1、そしてES細胞FES1並びにFES2、ntES1並びにntES2, および129/GFP ESの7株の第3染色体の同一部位に共通に存在することが判明した。また、Acr-GFPが
第3染色体の片方にのみ挿入されていること(FISHにより確認)、Acr-プロモーターのコピー数がどれも約20コピーであること、GFP挿入部位を挟んで第3染色体の約200kbの重複があることと、GFP挿入部位に隣接して第4染色体20kb断片の逆向きの挿入があることも共通していることが判明した。これらの特徴は、2003年にCDB若山研が大阪大学岡部研より導入したAcr-GFP/CAG-GFPマウスの特徴と完全に一致する。
2)SNPsデータの解析結果
今回調査の対象とした表:STAP関連細胞株一覧に挙げる12種類の幹細胞の遺伝的背景を明らかにするために、理研によりTaqMan PCR法を用いたSNP解析が行われた。これまでに、理研の調査によって、Acr-GFPとCAG-GFPとが共挿入された株を重点的に検定すべきとの結論が得られた。このことを踏まえ、前出の12種類の幹細胞株、およびそれらの幹細胞株が作製された129系統、C57BL/6系統、およびそれぞれの亜系統(計14系統)を調査した。
まず、129系統、C57BL/6系統を区別しうるSNPsを比較した結果、以下のことが判明した。
(1)STAP幹細胞FLS3、FI幹細胞CTS1、およびES細胞FES1ならびにFES2における性染色体の構成は、母親由来のX染色体は129、父親由来のY染色体はC57BL/6であることが判明した。従って、STAP幹細胞FLS3、FI幹細胞CTS1が129 x C57BL/6であるという、論文の記載と一致していた。また、129/GFP ESもこれら三者と同一の性染色体SNPsを持っていた。他方、同じAcr-GFP/CAG-GFPの挿入を持つES細胞ntESG1、およびntESG2のX染色体はC57BL/6であることが判明したことから、調査対象のSTAP幹細胞FLS3、FI幹細胞CTS1と性染色体の構成が異なるため、これらは比較解析の対照から除外された。
(2)常染色体のSNPsも同様にして調査した。その結果、STAP幹細胞FLS3、FI幹細胞CTS1、およびES細胞FES1、FES2、ならびに小保方研ストックES細胞129/GFP ESは、ほぼ129 x 1/SvJmsSlcxC57BL/6NCrSlcの遺伝的背景を持つことが判明した。ただし、本来は全てのSNPsで129とC57BL/6のヘテロ接合体になるべきと考えられたが、実際は調査した99か所中4か所において129由来のホモ接合体になっていた。このことは、これらの幹細胞を作製したマウス系統の遺伝的背景に不均一性があったため生じた可能性と、これら4か所において突然変異が生じた場合とがあることを示していた。実際、若山研で飼育されていたAcr-GFP/CAG-GFPマウス(遺伝的背景はC57BL/6)には、その遺伝的背景に不均一性が見られた( 3)NGSによる解析結果 を参照)。
(3)以上のことから、STAP幹細胞FLS3、FI幹細胞CTS1、ES細胞FES1、および小保方研で見つかった129/GFP ESの、常染色体に存在する129ホモのSNPsが、突然変異、あるいは遺伝的背景の不均一性によるものとしても、もしこれらの幹細胞がそれぞれ独立に作製されたものであるなら、これらの4か所に共通のSNPsが観察される可能性は低く、これら4種類の幹細胞が共通の細胞に由来することを強く示唆する。
次世代シークエンサー(NGS)による解析結果
表:STAP関連細胞株一覧に挙げる12種類の幹細胞のうち、FLS-Tを除く11種類、それらの幹細胞が作製された129系統、およびC57BL/6系統に関して、全ゲノムSNPs分析を行なった。その結果、STAP幹細胞FLS3、FI幹細胞CTS1および「129/GFP ES」と呼ばれる小保方研のフリーザーから発見されたES細胞は、2005年に若山研で樹立された受精卵由来のES細胞FES1およびFES2と遺伝的背景の類似性が高いことが明らかになった。
これら5種類の細胞のSNPs分布を詳細に観察すると、特に疑義の生じているSTAP幹細胞FLS3、FI幹細胞CTS1、ES細胞129/GFP ESおよびFES1の4細胞株の遺伝的背景は酷似していることが判明した。他方、ES細胞FES1と同時に樹立されたES細胞FES2は、ES細胞FES1とかなり類似したSNPs分布を有するものの、第6染色体,第11染色体および第12染色体の一部にES細胞FES1と異なる領域が存在していた。これら3領域では、ES細胞FES2でB6/B6のSNPsがES細胞FES1ではおしなべてB6/129となっており、また、ES細胞FES2でB6/129のSNPsはES細胞FES1で全て129/129であるという極めて特徴的なSNPsパターンの相違を示した。このことから、ES細胞FES1とES細胞FES2の樹立当時、交配に用いられた親マウスの遺伝的背景は均一ではなく、第6、第11、第12染色体のこれらの領域がB6のSNPsのものと129のSNPsを持つものが併存していたと推定される。そして、ES細胞FES1とFES2は、樹立時にそれぞれ異なるSNPsを持つ染色体を親マウスから受け継いだ可能性が高い。ES細胞FES1とFES2で異なるSNPsを示すこれらの第3染色体領域に関して、2012年に樹立されたとされるSTAP幹細胞FLS3、FI幹細胞CTS1および小保方研ストックの由来不明ES細胞129/GFP ESは、ES細胞FES1とほぼ同一のSNPsパターンを示し、ES細胞FES2とは異なっていた。
上記の129由来のホモクラスターは、染色体上の狭い領域に突然変異によって生じたSNPsが点在するものであり、今回4種の幹細胞には、第6、第11、第12染色体上に129に特徴的なクラスターが、また第17、第18、第19染色体等にC57BL/6のクラスターが認められることから、TaqMan PCRによって観察された129ホモのSNPsはこれら幹細胞の作製に使用したマウスに存在した遺伝的背景の不均一性によるものと結論づけた。
ES細胞FES1とFES2でのみ異なるSNPsに関して、両者の遺伝的背景の相違によると判断された上記第6、第11、第12染色体のSNPsクラスターを除外し、残った1,290SNPsを用いて比較を行うと、STAP幹細胞FLS3、FI幹細胞CTS1、および、ES細胞129/GFP ESは同一細胞株といって良い程の高い類似性を示すことが判明した。従って、STAP幹細胞FLS3、FI幹細胞CTS1、および129/GFP ESは同一の細胞由来であり、ES細胞FES1と同一、あるいはそれから派生した株の可能性が高い、と結論づけた。
4)第3染色体と第8染色体の欠失変異
STAP関連11細胞株の全ゲノム解析から、第3染色体の17kbの欠失と第8染色体の5kbの欠失(第8染色体は129系統由来;第3染色体はB6系統由来)が上記STAP幹細胞FLS3、FI幹細胞CTS1、および、ES細胞FES1並びに129/GFP ESだけに共通に存在することが判明した。この2箇所の欠失は、STAP幹細胞FLSおよびFI幹細胞CTSの全ての株にも共通に存在することがPCR産物の塩基配列決定により確認された。一方、この両欠失は、市販の129の亜系である129x1/SVJJmsSlc(SLC)と129+Ter/SvJcl(CLEA)のいず
にも存在しない。また、この第3染色体の5kbの欠失も、市販のB6の亜系であるC57BL/6JJmsSlc (SLC)、C57BL/6NCrSlc (SLC)、C57BL/6J (Charles river)、C57BL/6NCrl (Charles river)、C57BL/6JJcl (CLEA)、C57BL/6NJcl (CLEA)のいずれにも存在しない。さらに、2010年に若山研で受精卵凍結されたAcr-GFP/CAG-GFPマウスにも存在しなかった。
もし、これらの細胞が論文に示されていた(129 x C57BL/6)F1から作製された株であるなら、これら2個所の欠失の両方、または片方が市販の129系統、C57BL/6系統のいずれかに存在していなければならず、STAP研究の行なわれた2年強という期間でこれら2個所の欠失が生ずることは考えにくい。従って、この結果は、これら4種類の細胞が、論文に示されていた(129 x C57BL/6)F1マウスから直接作製された株ではないことを明確に示している。
(c)STAP幹細胞GLSは、ES細胞GOF-ESに由来する
(調査結果)
ArticleのFig.5およびExtended Data Fig.8に、STAP細胞をACTH+LIFの条件で培養すると、増殖傾向を示すES細胞様のGFP発現細胞(STAP幹細胞)となったことが報告されている。
STAP幹細胞GLS1とGLS11~13は、若山氏の実験ノートによると、小保方氏がGOFマウス細胞から作製したSTAP細胞を用いて、若山氏が2012年1月31日に樹立したことが判明した。
一方、ES細胞GOF-ESは、CDBの別のグループから供与された、Oct4プロモーター下にGFPを発現するGOFマウスから、若山氏が指示した別の研究に使用する目的で、2011年5月26日から10月31日の間にCDB若山研メンバーによって作製された。この期間に、小保方氏から、当該メンバーに対し、STAP細胞の研究でコントロールとして使用したい、との依頼があり、培養皿ごとES細胞GOF-ESが小保方氏に手渡された。
以上の背景から、STAP幹細胞GLSがES細胞GOF-ES細胞の混入によるという疑義が生じたため、ゲノム比較解析を実施した。
その結果、STAP幹細胞GLSの中から選んだGLS1とES細胞GOF-ES細胞において
1)全ゲノム上のSNPs分布(C57BL/6マウス背景)が同一
2)挿入遺伝子の種類、コピー数、挿入領域の配列が同一
3)由来するマウスの性別(メス)が同一
4)X染色体上の構造異常(大きな欠失+末端重複逆位接続)が同一
であることが確認され、STAP幹細胞GLS1 とES細胞GOF-ES細胞がほぼ確実に同一であることが判明した。また、
5)マウス個体でX染色体上に上記のように大きな構造異常が生じた場合、その染色体は世代を超えて安定に維持されないこと
6)ES細胞GOF-ESの元となった親のGOFマウスには、X染色体構造異常が認められなかったこと
7)GOFマウスのSNPs分布が、STAP幹細胞GLS1 およびES細胞GOF-ESのSNPs分布と異
っていたこと
8)STAP幹細胞GLS1以外の全ての独立なGLS株でも、STAP幹細胞GLS1と同じX染色体上の構造異常が見つかったこと
が判明した。
以上のことから、STAP幹細胞GLS1および他のGLSがGOFマウス細胞由来のSTAP細胞から作製されたことは否定的となった。また、X染色体構造異常はGOFマウスからES細胞が作製された過程に生じ、これが STAP幹細胞GLS に反映された可能性が示唆された。
さらに、CDB若山研メンバーがES細胞GOF-ESを作製したのが2011年5月26日~同年10月31日であり、小保方氏が提供したSTAP細胞から若山氏がSTAP幹細胞GLSを作製したのが2012年1月31日であったことから、ES細胞GOF-ESがSTAP幹細胞GLSの作製に寄与したと考えることに時間的な矛盾はなかった。
なお、STAP幹細胞GLSには第8染色体のトリソミーがあったが、GOFマウスおよびES細胞GOF-ESにはなかった。このトリソミーはマウスでは致死だが、ES細胞でときどき生じるもので、STAP幹細胞GLS作製(GOF-ES混入)時または作製(混入)後に生じたと考えられた。
以上より、本調査委員会では、「STAP幹細胞GLSとES細胞GOF-ESは同一由来の細胞である」と認定した。また「GOFマウスからES細胞GOF-ESが樹立された過程でX染色体上の構造異常が生じ、GOFマウスからSTAP細胞を経てSTAP幹細胞GLS が作製された過程でこのES細胞GOF-ESの混入が生じ、それを用いた実験結果がArticleのFig.5およびExtended Data Fig.8に示された」と結論づけた。
(d) STAP幹細胞AC129は、129B6F1マウスから作製された受精卵ES細胞に由来する
(調査結果)
STAP幹細胞株樹立に遺伝的背景が及ぼす影響を調べる実験が、若山氏により2012年夏から秋にかけて行われ、2012年9月4日にSTAP幹細胞AC129-1およびAC129-2が樹立された。若山氏が交配した129/Sv-CAG-GFPマウス(CAG-GFP遺伝子が第18染色体に挿入されたホモ接合体)由来の脾臓CD45陽性細胞を材料とし、小保方氏がSTAP細胞を作製し、それを用いて若山氏がSTAP幹細胞としてAC129を樹立した。この細胞ストックはCDB若山研が山梨大へ移転する際に山梨大へ運ばれ、また一部は小保方研へ分与され、それぞれフリーザーに保管されていた。このうち、小保方研フリーザーに保管されていたSTAP幹細胞AC129-1について、SNPsマーカーのTaqMan PCR法による解析を行い、さらにNGSにより全ゲノムDNA配列を解析した。同じくSTAP幹細胞FLSの対照としてCAG-GFPマウスから作製された受精卵ES細胞(129B6 F1ES)の解析も同時に行った。得られたデータを他の細胞等の解析結果や公開データと照合した結果、以下のことが判明した。
1)SNP解析の結果
STAP幹細胞AC129-1は129CAG-GFPとB6CAG-GFPを交配したF1マウス(オス)に由来することが判明した。SNPs197カ所についてタイピングを実施した結果、STAP幹細胞
C129-1はほぼ完全に129B6F1のSNPs分布を示した。さらに、SNPsの同一性は全ゲノムDNA配列解析でも確認された。用いたマウスから想定される129/Svホモ接合体ではないことから、実験過程に何らかの間違いがあったと考えられた。
2)NGS解析の結果
AC129-1が有するGFP遺伝子は第18染色体(塩基位置46,261,277)に1コピー挿入されていた。これはCDB若山研で樹立されたCAG-GFPマウス(129系統およびB6系統)と同じ挿入部位であった。また相同染色体の両方に挿入を有するホモ接合体であった。
3)STAP幹細胞AC129-1の第6染色体中央部分にB6ホモ領域が存在した原因
以上の解析は、同細胞が129 CAG-GFPとB6 CAG-GFPを交配したF1マウスに由来することを示したが、第6染色体中央部分にB6ホモ領域が存在したことから、この原因についてさらに調べた。129CAG-GFPマウスは129X1/Svとの戻し交配よりB6CAG-GFPより遺伝的背景を129 に置き換えたものであるが、現在、山梨大学若山研で維持されている129 CAG-GFPマウスの全ゲノムのSNP解析から、129 CAG-GFPマウスの遺伝的背景が十分に均一化されていないことが判明した。特に第6染色体中央部分に約30 Mbに及ぶ129とB6のへテロな領域が存在する。この遺伝的背景の不均一性により、AC129-1の有する第6染色体B6ホモ領域が生じたと考えられる。
4)他の細胞株における遺伝的不均一性
この遺伝的不均一性は、129 CAG-GFPマウスに由来する他の細胞株にも反映していた。若山氏により129B6F1CAG-GFP マウスの独立した胚より複数の受精卵ES細胞株が樹立されているが(129B6 F1ES1~6、2012年5月作製)、いずれも第6染色体中程にB6ホモ領域を有していた。しかし、このB6ホモ領域と129/B6ヘテロ領域の境界は129B6 F1ES1~6の間で異なっていた。このばらつきは、129 CAG-GFPマウスの配偶子が形成される際、減数分裂の過程で、B6と129の染色体の組換えによって生じた可能性が高いと考えられる。ただし、細胞株樹立時の体細胞分裂における染色体組換えがこの多様性に寄与した可能性もある。
5)STAP幹細胞AC129-1の染色体における特徴的な構造変異
STAP幹細胞AC129-1は染色体に特徴的な構造変異(欠失4カ所、重複1カ所)を有していた。欠失1は第19染色体の約9kb、欠失2は第1染色体の約5kb、欠失3は第第4染色体の16kb、欠失4は第10染色体の約2kbをそれぞれ欠くものであった。重複1は第1染色体の約2.5kbが繰り返すものであった。この中で欠失2は現在、山梨大学若山研で飼育されているB6 CAG-GFPマウスに存在するが、129 CAG-GFPマウスには存在しないことをPCR法により確認した。他の構造変異は、現在のB6 CAG-GFPマウスおよび129 CAG-GFPマウスには存在しない。同じ親マウス系統の交配から樹立された互いに独立な129B6 F1ES1~6は、欠失1と2を全て共有していたが、性別はまちまちであり、他の4種類の構造変異をそれぞれ固有の組み合わせで有していた。したがって、これら4種の構造変異は、細胞株樹立当時の親マウスのどちらかあるいは両親にヘテロで存在した可能性が高いと考えられる。
129B6 F1ES1はSTAP幹細胞AC129-1と同じくオスであり、同一の構造変異を有し、さ
に4)に述べたように第6染色体B6ホモ領域の境界も両細胞で一致していた。一方、NGS解析を行った129B6 F1ES6は欠失1~3は有するものの、欠失4および重複1は有しない。また、第6染色体B6ホモ領域境界もAC129-1とは異なっていた。
また、STAP幹細胞AC129-2、STAP幹細胞FLS-T1、FLS-T2(小保方氏指導のもと若山氏がSTAP細胞を得、そこから樹立したSTAP幹細胞)も、129B6 F1ES1が有するゲノム構造の特徴を、性別も含めて共有していた。
以上の調査結果を総合すると、異なる時期に作製された3種の細胞株、129B6 F1ES、 STAP幹細胞AC129およびSTAP幹細胞FLS-T(AC129-1、AC129-2、並びに、FLS-T1、 FLS-T2)はそれぞれ独立の細胞株なので、5個の独立した細胞株、129B6 F1ES1、STAP幹細胞AC129-1、AC129-2、並びに、STAP幹細胞FLS-T1、FLS-T2)が偶然、性別および、4種のゲノムの特徴(欠失3、4、重複1、第6染色体B6ホモ領域)を共有する確率は極めて低い。したがって、STAP幹細胞AC129-1、AC129-2、並びに、STAP幹細胞FLS-T1、FLS-T2は、129B6 F1ES1に由来すると結論づけた。
STAP幹細胞AC129とされる細胞は2012年8月13日に作製されていることから、この細胞はこれ以降に実施された実験に用いられたと判断した。公開データ再解析の結果によれば、論文に記載された実験の中ではLetter Fig.4に使われた可能性が高く、またLetter論文Fig. 2iにも使われた可能性がある。しかし実験記録の不備から使用実験を特定するには至らなかった。なお、Articleのメソッドに、129/Sv carrying Rosa26-gfp からキメラ寄与能を有するSTAP幹細胞が樹立された、との記述があるが、129/Sv carrying Rosa26-gfpマウスは理研CDBに導入された記録や飼育記録はないことから、これは誤記と考えられ、若山氏の説明によればここで言及されたSTAP幹細胞はAC129であった可能性が高い。
(e)STAP細胞やSTAP幹細胞由来のキメラはES細胞由来である可能性が高い
(調査結果)
1)Article Fig.4とExtended Data Fig.7に129/Sv×B6(CAG-GFP) F1マウスから作られたSTAP細胞由来の2Nキメラができたこと、さらにgermline transmissionにより、このキメラの子ができたことが報告されている。
小保方研のフリーザーに「カルスキメラ子1」~「カルスキメラ子9」と書かれた9本のDNA試料があり、2011~2012年のCDB若山研ではSTAP細胞を「カルス」と呼んでいたことから、これらはこのキメラの子のDNAと考えられた。実際に、小保方氏への聞き取り調査により、これらの試料はArticle Extended Data Fig.7に出てくるキメラの子から小保方氏が抽出したDNAであることを確認した。若山氏の実験ノートでは、このキメラの作製は2012年1月終りから2月はじめにかけて行なわれていた。
これら9本の試料を理研でPCRにより解析したところ、ES細胞FES1に存在するAcr-GFPの第3染色体への挿入を持つ試料が3本、STAP幹細胞FES1固有の第3染色体欠失(~5kb)を持つ試料が4本、第8染色体欠失(~17kb)を持つ試料が2本あることが判明した。ここで、ES細胞FES1固有というのは、STAP細胞を作ったとされる親マウス、ES細胞FES1を作製したマウス、ES細胞FES1と独立に作製したES細胞FES2に
ないという意味である。したがって、このDNAは、ES細胞FES1に由来する可能性が非常に高い。
2)Article Fig.5k にSTAP幹細胞由来の4Nキメラが掲載されている小保方研のフリーザーに「4N-1」~「4N-8」と書かれた、4Nキメラから抽出されたと思われる8本のDNA試料があった。聞き取り調査の結果、これらのDNA試料は2012年4月6日にCDB若山研メンバーが4Nキメラから抽出したものであることが判明した。若山氏によると、この4Nキメラは、STAP幹細胞FLSから同年2月15~22日に作製したものと思われるということであった。また、小保方氏もこのDNA試料はSTAP幹細胞FLSの4Nキメラのものとの見解だった。さらに、若山氏の実験ノートや撮影記録(2012年3月11日)からもArticle Fig.5kのマウスであることが確認された。
この試料を理研でPCRにより解析したところ、全ての試料で、親マウスの持つ第18染色体挿入のCAG-GFP は存在せず、ES細胞FES1に存在する第3染色体挿入のAcr-GFPが検出された。したがって、これらの試料もES細胞FES1に由来する可能性が高い。
(f) STAP細胞から作製されたテラトーマは、ES細胞FES1に由来する可能性が高い
(調査結果)
Article Fig.2eとExtended Data Fig.4a-cに登場するSTAP細胞由来のテラトーマは、いずれもOct4-GFP+細胞の7日目細胞塊から由来したとされている。しかし、以下1)~3)の検証結果に示す通り、このテラトーマは、
(1)Acr-GFP遺伝子を含むがOct4-GFP遺伝子は含まないこと
(2)ES細胞FES1に特異的な2個の欠失が定量PCRの解析で検出されたこと
(3)組織切片のFISH並びに染色体ペインティングで大部分の細胞にX染色体とY染色体各1本が検出されたこと(ES細胞FES1がXY(オス)であるという事実と合致)
が判明した。よって、これらの図に登場するSTAP細胞由来のテラトーマは、ES細胞FES1に由来する可能性が高い。
1)残存試料の同定
Article Fig.2eとExtended Data Fig.4a-cに提示されたSTAPテラトーマの全ての画像は、CDBに残されていたテラトーマのスライドグラス標本「6weeks+PGA 12/27移植 Haruko」から得られたものである。このスライドグラスの試料は、小保方研に保存されていたパラフィンブロックの形態の比較から、「CD45カルス-テラトーマ」と記されたパラフィンブロックより採取されたことが判明した。
2)定量PCRによる検証
パラフィンブロック「CD45カルス-テラトーマ」より夾雑物の混入を防ぐために不要部分を整形した後、5μmの切片10枚(カルス-テラトーマ1)または20枚(カルス-テラトーマ2)を用いて、DNAの抽出を行った。抽出後のDNA 2.2 μg(カルステラトーマ1):および6.1 μg(カルステラトーマ2)を用い、定量PCRにより、トランスジーンのコピー数、およびES細胞FES1に固有の第3染色体と第8染色体上の欠失(表:STAP関連細胞株一覧、および3-2-1-1.の (b)を参照)を解析した。 11
ホルマリン固定によるDNAの断片化を考慮し、検出するPCR断片の長さを100bp以下に抑えて、定量PCRでの確認を行った。なお、実験操作過程で、試料以外からのDNAの混入がないことを確認するため、「CD45カルス-テラトーマ2」の実験ではすべての試薬と器具を更新し、別の場所で行った。
カルス-テラトーマ1とカルス-テラトーマ2を実験群とし、陽性対照群として3種類のSTAP幹細胞FLS4(ES細胞FES1由来。Acr-GFP:~24コピー/ゲノム)、129B6F1 ES5(CAG-GFP:2コピー/ゲノム)、STAP幹細胞GLS13(Oct4-GFP:~28コピー/ゲノム)を、陰性対照としてC57BL/6NSlc(GFP なし)の尾由来組織を選択した。内部標準遺伝子として、常染色体上に存在するIL2遺伝子を選び、この検出量を2コピーとして、それぞれの試料のGFP遺伝子の増幅率を2コピーで除することにより、コピー数を算定した(プライマーによるPCR効率の違いを補正していない半定量的な測定)。
その結果、GFPに対する2種類のプライマーセットによる実験で良好な再現性が確保できた。実験群の上記2種類のテラトーマは、20コピーから30コピーのGFP遺伝子を保有することが判明した。また、陽性対照はそれぞれのGFPのコピー数を反映していた。また、陰性対照のC57BL/6NSlcマウス組織からはGFP遺伝子は検出できなかった。
次いで、Oct4-GFPとAcr-GFPの区別を行うために、Oct4-GFPとAcr-GFPのそれぞれの接続部分にプライマーを設定し、上記と同様に定量PCRでの定量を行った。
その結果、Acr-GFPを検出するプライマーでは、実験群の「CD45カルス-テラトーマ」と陽性対照群STAP幹細胞FLS4から、それぞれ約15コピー、11コピーのコピー数で検出された(プライマーによるPCR効率の違いは未補正)。
さらに、ES細胞FES1に固有の第3染色体および第8染色体上の欠失の有無を定量PCRにより検出する実験を行った結果、どちらの欠失も、「CD45カルス-テラトーマ1、2」とSTAP幹細胞FLS4(上記(b)の結果によるとES細胞FES1由来)のみで確認できた。したがって、パラフィンブロック「CD45カルス-テラトーマ」の試料は、ES細胞FES1の混入したものである可能性が非常に高い。
3)組織切片染色体FISHでの検証
パラフィンブロック「CD45カルス-テラトーマ」から作製した組織切片について、それぞれX染色体とY染色体に特異的なプローブを用いてFISHを行った。その結果、Acr-GFP/CAG-GFP陽性細胞が存在するとみられる領域の大部分の細胞がオス型の染色体(XY)を有しており、ES細胞FES1由来であるという上記の結論と矛盾しない。