テレビが神棚、仏壇の次の位置を占め、ブラウン管には立派な布がかけられ、NHKの報道はほとんど神様のお告げだった時代。
『タイムトンネル』という番組があった。
その番組の中で、こんな言葉があったのを記憶している。
「ジャワじゃだめだ!スマトラだ」
もう半世紀も経つのに、このセリフはよく覚えている。
ジャワとスマトラの間にある、クラカタウが噴火した時の場面だ。
この時、主人公が叫んだ言葉である。
1883年。
人類のわかる史上5位、遠くまで噴火音が人の耳に聞こえたものでは史上1位の大噴火があった。
この時の噴火音は、4800km離れたインドの一部でも聞こえたらしい。
東京でも、噴火による気圧変化が観測された。
またフランス・ビスケー湾でさえ、潮位変化が観測されている。
この時に噴火で起きた津浪被害者数は、同じくスマトラで先日おこった地震津波被害が出るまでは、人類史上最も多くの犠牲者を出したものだった。
20世紀からタイムトンネルを使ってこの時代にやってきた主人公は、ジャワでの津波被害のことを知っていて逃げる先は「ジャワじゃだめだ!スマトラだ」と叫んだのだった。
クラカタウの噴火は島一つを吹き飛ばしてしまうほどで、人類の歴史にも大きな影響を与えている可能性が高い。
535年の噴火では、インドネシアにあった高度に発展した文明を破壊した。
同時に、東ローマ帝国が衰退したのも、ヨーロッパでペストが大流行して人口が減ったのも、また、イスラム教が生まれたのも、このクラカタウ噴火による気温低下・食糧不足にあるという説がある。
さらに、マヤ文明の衰退をこれに関連付ける説もある。
1883年の噴火では、地球大気の気温が0.5~0.8度くらい下がり、凶作の原因になったとも言われている。
このクラカタウ噴火後に生まれたアナク・クラカタウ(クラカタウの息子)は、多い時には1日の噴火回数1万回を超え、現在も活発に活動して山を作り続けている。
世界屈指の活火山と言っていいだろう。
余談だが、この近辺ではほぼ毎日、M5以上の地震が起きている。
★データ
クラカタウ(多数の火山の島全体) 標高 813m程度(成長中)
インドネシア スンダ海峡(ジャワ・スマトラ間)
最近の巨大噴火 1883年(爆発音感知最長記録、東京での気圧変化、ビスケー湾潮位変化確認)