【近似小説】優しき隣人 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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「プレ五輪ならびにテストを考えると、あと2年3ヶ月しかありません。大丈夫?」

「大丈夫です。イルボンがやらなければなりません」

「なりません?だってイルボンは関係ないでしょ」


「いいえ。イルボンには1000年の責任があります」


「しかし、雪はどうにもならないでしょう。プレゼンでは、水増しデータ流してしまってますけど、どうするつもり?」


「降雪機を使います。オソロシアも使いました」

「だって、お宅には降雪機なんてないじゃないですか」


「大丈夫。イルボンが用意します」


「いやいや、オソロシアはもともと雪がある山岳地帯。降雪機は補助でしかありません」


「降雪機をたくさん用意すれば大丈夫です。当然、イルボンが発注します」


「万が一ですよ。何百台か何千台かの降雪機があったとしてもですね。水が無いと雪は作れませんよ」


「大丈夫です。イルボンが用意します。対馬から配水パイプを引きます。あるいは、トンヘから海水を引きます」


「海水じゃあ、ダメですよ。真水ではないと」


「大丈夫です。逆浸透膜で淡水化します」


「何百、何千台分をですか?」

「大丈夫。イルボンが担当します」


「万が一の万が一、そうやって雪ができても、標高差はどうしますか?滑降競技をするには、高さがあと400メートル足りないけど」


「問題ありません。土を盛って標高差をつけます。イルボンには黒田官兵衛という堤作りのプロがいますから、大丈夫です」


「リュージュ、ボブスレー、それからスケルトンも、まだ場所さえ決まってないようですが。設計図はできた?」


「大丈夫です。イルボンがナガーノから運んできます」


「はあ?競技場をですか?」


「折り畳めば、戦艦ヤマトに載せられます」


「???」


「心頭滅却すれば、火もまた涼しからずや。大丈夫、イルボンの『真冬のソプラノ』ファンがやり方を考えています。いや、考えていなければなりません」





「さっきからイルボン、イルボンって、その名前しか出て来ないんですが、これはお宅で開催する競技ですよ」



「いいえ。我が国とは関係がありません。あれは、エバラノタレ郡が勝手に決めたことです。『真冬のソプラノ』の舞台となったエバラノタレ郡を訪れたイルボンには、ファンとしての責任があります。これは当然です。常識です!」


「言ってることが分からないなあ」


「どうしてですか?『真冬のソプラノ』の撮影地見学に来たのは、9割がイルボンです。当然、真冬でも雪がうっすらとしか積もらないのは知っていたはず。知っていて協力しないのは、人道に反します。さらに、エバラノタレ郡を訪れたバハサンたちは、イルボンにエバラノタレ郡五輪の援助を要求する義務があります。ねっ。これで十分納得できたでしょ」





「………………」