【日記小説】赤い南瓜を食べた日 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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明日までに?
耳を疑った。
この町には200万人が住んでいる。家もある。ささやかな生活の毎日がある。
明日からは、それが無くなるというのか?




子どもをさらっていかれた。
婆さんは、頭に鉛のたまを喰らわされた。

もう、家族とは会えない。 家族を否定しているのだから。



次の日から、俺は蟻になった。
くる日もくる日も、もっこで土を運んだ。




昨日は3人だけだった。ずいぶん少ない日だ。普段なら10人は水溜まりに投げ入れられる。

それを運んで投げ入れるのも、俺たち蟻の仕事だ。 蟻が蟻を捨てる。おかしなもんだ。
考えても仕方がない。さて、今夜もコオロギを食って寝よう。今日は3匹も捕まえられた。
満足である。





今日はつらかった。
あいつは単に、白い飯が懐かしいと言っただけなのだ。 が、それを聞いた別の蟻が、少年兵に密告した。
当然やつは、動かない身体になって戻ってきた。足が奇妙に曲がった姿になって。
ここまではよくあることだから、さほど驚かない。
驚いたのは、それを蹴飛ばすようにして置いていった少女兵だ。



ああ、なんということか。
あれは、……。

わが……。

間違うはずがない。
まだ目も開かぬうちから、13年も見てきた顔だ。


ああ、神よ。



膝が反対に曲がった蟻を見て、赤い南瓜たちが笑っている。





これは、たぶん小説です。
誤解のないように。