現在の政治に対する見方は非常に異なっている(ように見える)が、私がこよなく尊敬する日本語マジシャンのブロガーさんがいらっしゃる。
先日、いにしえの物語を現代語訳されたが、ただただ唸るしかなかった。
やはり、プロは違うなあと。
あまりのレベル差にしばし呆然としたが、そこはボケじじいの長所。 そのレベル差を忘れて、猿真似ではあるが怖いものに挑戦したくなったのである。
とはいえ、いにしえの文章を現代語訳できるほどの力はない。
そこで、話を現代に変えて、作品ではなく単なる筋書おはなしを書いてみようかと考えた。
その題材の最初に浮かんだのが、古事記の倭建(ヤマトタケル)の話の一部だ。 ここを選んだのは、古事記の中で一番好きな描写をしているからである。
日本書紀に見られるような、政治的色合いが感じられず、現代にも通ずる心のあやが見えるからである。
非常に短い描写だ。が、なかなか面白い。
主人公名がヤマトタケルでは現代風ではないので、山本武司とでもしてしまおう。
さて、では始めるか。
………………………………
中東から帰ってきたばかりの山本武司君に、また転勤の辞令が出たのです。
社長がおっしゃられたのは「南米の売上が落ちているから、すぐに行って建て直してこい」ということでした。
しかも、単身赴任です。
いや、専務の親戚のなんとかたれ平というのも一緒だとのことでしたが、たぶん全く戦力にならない人物だったでしょうね。
山本君は、形ばかりは南米某国社長との肩書きを付けられました。
さて、南米へ赴任前にニューヨークに立ち寄った山本君。そこで彼は、若い時から面倒をみてくれていた、今は亡き元会長、その夫人の館を訪ねました。
昔から、親子のような関係ということがあったからでしょうね。
彼は、ついつい愚痴ってしまいます。
「社長は、私のことが気にいらないんですよ。この間まで中東の砂漠で、鉛の雨降る中を走り回っていたんですよ。普通なら日本へ帰ったら、しばらく休ませてもらえますよね。それが息つく暇もなく、南米です。しかも、治安がすごく悪化している街への駐在ですよ。たぶん社長は、私が流れ玉にでも当たって死んでくれればいいとでも思っているんですよ」
そう言って、山本君はブランデーを一気に飲み干しました。
「なんかあったら、ここにメールするのよ。いい」
元会長夫人はそう言って、優しく山本君を胸の中に包んだそうです。
おわり。
もちろん事柄は全く違いますが、心情はほとんど同じことが、古事記に書かれています。
古事記も、なかなか面白いですよ。