【随筆風日記】記憶と思い | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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空腹と苦難と喜び、さらに本人にとっては想定外の驚き連続の旅の話を聞く。
まあ、無事帰って来ただけで合格点であるし、息子の想定外は、すべて私の想定内の事柄ではあったが、やはりあまりに何も知らなかったことに、逆に感心さえしてしまった。
格安航空券なので、移動だけでほぼ丸1日。途中赤道直下のトランジット地では数時間待たされる。が、私にとっては新宿・渋谷より身近なその中継地で、飯ひとつ頼めず、空腹でのめまいとたたかっていたらしい。あんな世界一安全で、場内の買い物もしやすいところで、飯ひとつ頼めなかったとは。まあ、笑ってしまう。
さらに、本人自身、トランジットを山手線から京浜東北線に乗り換えるくらいの感覚でいたようだ。
だから、次の飛行機に乗るのに、バスで移動したりするのに慌て、相当うろうろしたようである。

かかるヘロヘロ旅行から帰ってきた姿を見て、いろんなことが思い出されてきた。


それは相当昔。
私の記憶に間違いがなければ、1974年の夏のことだった。
高校時代の友が私の街に来るのは、その日の午後の予定だった。
が、その日の朝は、まだ私は蔵王の山の中にいた。
計算では待ち合わせに間に合うはずだった。

まだ、携帯は無論、下宿への連絡にも問題がある時代だった。

言い訳はいくらでもできる。
が、結局私は約束を守れず、その男をまた東京に帰らせるはめとなってしまった。

が、後にそいつは笑って「そんなこともあるわな」と、何もなかったかのように接してくれたばかりか、東京に出て行った私を、厚くもてなしてくれ、偽東大生よろしく一緒に授業にまで連れて行ってくれた。

身体は細いが、大きなやつだと思った。

そいつと、数十年ぶりに連絡が取れた。

私が99.9%ナリスマシと推測した勘は、見事に外れた。

それなりの理由で、メッセージを見ていたようだ。
これは十分過ぎるほど分かる。私だって、30年以上連絡のない人間からメッセージが入ったら疑う。
ましてや、今の彼はそれなりの立場だから、相手には用心して当たり前だろう。
その後、何度かメッセージのやり取りをし、今は多忙な状況だが、時間をみてそのうち一杯との話にもなった。
で、奥さんとのラブラブ写真まで添付してきた。

この野郎!である(笑)。



さて、先の話に戻ろう。
そんな約束破りをした、翌年か翌々年だろうか。
帰省した私は、共通の友人であるKに偶然本屋で出くわした。
周りの勧めもあり、彼女は間近に結婚を控えていた。
それを告げて、何かを言いたげな彼女と、本屋の中でずいぶん長いこと話た気もするが、具体的に何を話したかまでは覚えていない。
ただ、彼女が当時話題になっていた『How to S 』の前で、熱心に立ち読みしていたのを、気付かないふりをしていたことはよく覚えている。

彼女が言った。
「そんな約束破りするのは最低!女なら絶対許さないわ」


だろうな、と最近は分かる。


私はいまだに大人になれないが、当時は赤ちゃんだった。
今以上に、相手の心理が読めなかったし、気にかけなかった。


わが2人の息子の知識は落花生以下ではあるが、そうした全体を見る感覚や思いは、私よりははるかに大人ではある。

まあ、あと少し基礎知識を身につけて欲しいところだが、それは親のわがまま、贅沢な望みなのだろう。


宿さえ決まらぬ格安航空券で生きて帰って来た息子と、久々に連絡がとれた友の、相変わらずの大きさに触れて、そんなことが思い出された。





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