【小説】証拠の日記 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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「誰だ!この記事をアップしたのは!」

顔を真っ赤にした編集長が、ドアを蹴破るようにして入ってきた。

やったあ!やっぱりあの記事がすごかったんだわ。
今年の社長賞はいただきね。

私は満面の笑みで手を挙げた。

「えっ?あ、あのう、キッチョムさんの記事なの?」

「はい。やっと見つけました。ずいぶん苦労したのですわ」

私は、ちょっとだけ眉間にシワをよせ、いかに私が苦労してそれを発見したかをアピールした。


「あ、あのね。誠に申し訳ないんだが、あの記事すぐに消してくださいな」


「えっ!」

私は耳を疑った。
が、すぐに気づいた。
そうだ。あまりに素晴らしい証拠となる日記の記事を書いたので、編集長は嫉妬しているのだ。
多分、編集長を通さない記事が社長賞では格好がつかないのだ。

私は怒りに震えて、こう言った。

「編集長。どうしてですか。これは歴史的な発見です。将校たちに棒で殴られ、足蹴りされながらも必死で働いた哀れな性奴隷の実態。そんな生活をしながら月にたった600円しか仕送りできなかったのです。ああ、なんとひどい哀れな日々であったことか」


と、編集長はこう言った。
「いや、あのね。棒球というのは野球のことで、足蹴球はサッカーのことなんですよ。つまり、将校たちと野球やサッカーをしたということ。それからね。当時の600円は、現在なら1000万円以上の価値。田舎なら立派な庭付きの家が買えました」




? !


えっ?

じゃあ、私の書いた記事は、性奴隷の証拠となる日記ではなく、……。



((号泣))


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