実は、慰安婦の話や南京事件の話にもそれはある。
慰安婦問題なら、日本帝国軍の話にある国連軍ジープや、アメリカ軍ヘリコプターなどだ。また、聞くたびに話の中身だけでなく、年齢まで変わる方々もいる。
実は口伝や手記の中にも、こうした不思議な存在がある。
例えば、会津の山奥からやってきたばかりなのに、全くと言ってよいほど方言がなく、将校でさえ持っていなかったような万年筆を持ち、極寒の暗闇でも達筆で行を間違えることなく書け、初めての殺戮さえ芸術家ばりの表現で、少年なのに還暦過ぎの大人顔負けの寂れた表現ができる。
もっとすごいのは、戦前に戦後に理解できる言葉で作文していることだ。
また、人間ならほとんど失明するか死亡することをし、元気な慰安婦とかもいる。
エスパーである。
あるいはスーパーウーマンだろうか。
現代医学をもってしても対処不可能なことを、なんなくこなしている。
あるいは、タイムマシンを利用した?
私だけでなく、ほとんどの日本人には不可能と考えられることができる。
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南京事件に疑問を呈したシリーズは終わったが、ひとつ一番重要かも知れないことが漏れていたので追加する。
大月出版
小野賢二、藤原彰、本多勝一各氏編
『南京大虐殺を記した皇軍兵士たち』
この書物の最初に掲載され、最も多くのページをさいている(全382ページ中52ページ)陣中日記のご紹介が漏れた。
他の兵士たちが、虐殺に関しては伝聞であるのに対し、この方は自らの体験談として語られている。
あまりに素晴らしい文章に、最も大切な方の日記紹介を忘れてしまった。
この方と、その日記の素晴らしさをまず簡単に説明し、そのうち私がうなってしまった文を挙げるとしよう。
この方は、南京入城後の1938年1月に1等兵になったから、日記を書いていたのは、一番下っぱの時だ。
ところが、日記がすごい。
縦11.5センチ、横7.5センチという小さな手帳に、1日も欠かさず日記をつけている。
非常に達筆だ。
驚くのはそれだけではない。
なんと、毎日原稿用紙にして、1、2枚を“万年筆”で書いている。
生死もままならぬ状況で、これはすごいことだ。
驚きは、まだ続く。
さらに、なんとほとんど現代口語文である。
古典的仮名遣いも時々ある(統一していない)が、全く口語訳しなくても、日本人ならまず理解できるような文章だ。
非常に特徴的なのは、句点を日記の最後に1個付けるだけで、他は読点ばかりである。
こうした文章は、他国の文章にはあるが、日本語にはない。
たいへんな名文を書いた二等兵だが、これは他の陣中日記には見られない特徴だ。
これだけの美文、達筆なのに、句読点の基礎ができていない。
さて、前書きはこのくらいにして、その日記の一部を紹介しよう。
言い方に語弊があるだろうが、このような美文を書ける能力ある兵士を二等兵にしていたことは、当時の上官は、人を見る目がなかったと反省しているに違いない。
★斎藤次郎 陣中日記
(原文のまま。口語訳なし。仮名遣いなどの誤りも訂正していない)
★句読点や仮名遣いには一部首を傾げたが、表現の素晴らしさに感動した文の一部紹介。
・高くかかげた国旗は灰色に煤けて無言のままだ、情緒をシンボルしている。
・波が静かなので畳の上を走って居る様な感じだ
・将校室にあてられた部屋が鮮血を以て紅に彩られた
・壕の中にコーロギが無心らしくコロコロと鳴いて居る
・戦死せる友は早くは臭気を放ち蝿が真黒に集まつている有様
・対抗せる敵もついに総崩れとなりようやく泥もふき1本の枝を手折つて心から弔ふ事が出来たことが嬉しいと云ふて男泣きに泣いた
・戦友もそんな家屋の中で楽しい夢路を辿つて居るのかスヤスヤと良い寝心地である
・支那人農夫夫婦が後方は安心したからとて帰つて来たが自分の住家が焼失して居るので暗然としている様はあわれと云うもあまりあり
・年歯も行かぬ子供が素足で荷物を背負ている姿を見ると思わず涙が浮かんで来る、敗国の国民は惨めらしい
・夜半にふと目をさます、雨がポツリポツリと降つている
・険悪な空模様は益々悪くなるばかり
・此の辺は紅葉する様な樹木があるので晩秋の訪れたのを知られる
・別な処には母が流弾にあたり倒れ其のそばに乳房にすがつた儘死して居るのには敵国の者とは云へ非戦闘員な何に考いない子供などの憐れな姿には涙がでる
・若松で刃をたてた銃剣を引抜いて満月に近い月光をあびて
・元気をつけて門出の挨拶をしたが後髪を引かれる親子夫妻の情愛に変わりはない
この斎藤次郎陣中日記が、件の書物の中心であった。
あまりの美文に酔い、すっかり忘れていました。
失礼。

★追記
勘違いされる方もいるかも知れないので追記します。
私はこの日記は、全く信用していません。
理由は、上に皮肉として書いています。

日本帝国軍の南京入城に、万歳しても歓迎する、南京市民
(毎日新聞系画報より)