「いつものことだ、日曜日の午後8時だべさ」
「いんや、聞いた話だがな、どうもかなりんとこで1日繰り上げちまうらしいぜ」
「そんなバカな」
「いんや、確かにそうらしいど」
「それ誰言ってた?」
「役場の連中だ」
「待ってくれ。役場の連中が、自分から決まり破りを口にしてんのがい?」
「ああ、オラそう聞いた。きったねえよな。村長の反対が多そうだから、たぶん早めに切り上げちまうんだ」
「ちょっと待ってくれ。その1日繰り上げちまうってのはどごた?知ってっか?」
「ああ、吊橋山と、芭蕉字と、枯れ場だ」
「なーんだ。なりゃ、当たり前だし、いつものことだろが」
「はあ?」
「その3つの字はな、吊橋渡ったり、ぐじゃぐじゃぬかるみだったり、崖道があって、雨やら風吹くと役場まで投票箱持ってこらんねえがら、いっつも1日早めに切り上げでっぺよ。もう、ずっと昔っから同じだっぺ。まるで今回だけズルやってるようなごと言っちゃなんねえべや」

