やはり地面に落ちている10円玉を探す輩だ。
「あーあ、まだ早いか」

男が誰にともなく言う。
「来週、また来るか」
私も独り言を呟く。
「俺は、九州からだからなあ」
男が恨めしげに呟く。
と、「おっ!」という声とともに、男が駆け出した。
50メートル先で、男の動きが止まった。
近視の私には眼鏡をかけても見えないが、なぜ駆け出したのかは想像がついた。
私はゆっくりと歩き出す。
10メートルくらいになった。
やはり、そうだった。

満足した男の背中が去った後、私もじっくりとそれを拝ませてもらったのだった。
