あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんおばあさんの家は狭いのですが、裏山はたくさん持っています。ですから、家の広さは村でも小さい方で、雨漏名主さんや赤鎌ぎっちょさんの家の20分の1もありません。
しかし、裏山が広いのでおじいさんおばあさんの持ってる土地の広さは、この郷でも指折りです。
最近、赤鎌ぎっちょさんちのガキどもが、おじいさんおばあさんの裏山に入って松茸やらしめじのシロをかぎ回ったりしています。
また、雨漏名主さんからは、裏山で採れる渋柿より名主さんちの庭になる蜜柑のが長生きできるから、ぜひ買いなさいとも言われています。

☆チャールストン
おじいさんおばあさんは、困ってしまいました。
赤鎌ぎっちょさんに文句を言うと、たぶんこの間貸した機織り機を返してくれないでしょう。
雨漏名主さんに、いや結構ですなどと言ったら、年貢米をかさ増しして納めないとへそをまげて何をされるか分かりません。
それに、毎日煮炊きに使う鍋釜を直してもらえなくなりますし、火打ち石も譲ってもらえなくなります。

☆ブルグンド'81
そこで、おじいさんおばあさんは考えました。
一番火の付きの良い火打ち石は裏無というのですが、実はもっといい火打ち石がありそうだと聞いたことがあったからです。
裏無は、火を付けようと叩く時に粕がたくさん飛び散り、目に入って痛くなります。
でも、噂に聞く火打ち石は、おじいさんおばあさんの裏山にたくさんある石っころにちょっと細工をすれば良いらしいのです。
が、その細工をしているのを、赤鎌ぎっちょさんに見られてしまいました。
だから、今朝の瓦版に、大きく『おじいさんおばあさんの家から危ない煙』なんて書かれてしまったのです。
本当は、危ない煙の話は表向きのことで、名主さんとなーなーまーまーの付き合いが気にくわないので、あんな風に、おじいさんおばあさんの大切な秘密を暴露したのです。
本当は赤鎌ぎっちょさんも、裏無ではない火打ち石が欲しくてたまりません。

☆ジュビレデ プリンセス モナコ