
「はい。島です」
知らない番号からだった。
普段なら居留守を決め込むが、種々の事情から電話に出た。
「あっ。島さんですか。どうも、どうも」
「あのう、どちら様で?」
「これは失礼。私CYAの高木と言いますねん。ヘンダゴロンの紹介で電話させてもらいましたわ」
「なんか、どっかで聞いたことのあるところに似た名前の会社ですな」
「いやいや、島さんの噂は聞いてますよ。1日8つ3連ですって?どうです。うちで働いてみませんか?1000万ならすぐ。島さんなら3000万も夢じゃない」
なんだ?株だの金・プラチナの話じゃないようだ。
時間があるから話に付き合ってみるか。
「ほう。そりゃすごい。中小企業の社長さんが泣く金額ですね」
「でしょう。中には1日100万っていうヤツもいますよ」
「ほう。しかし、そんなうまい話には裏がありそうですなあ」
「いやいや、裏も何も能力しだい。ちょっとしたマッサージテクニックと体力さえあれば……」
「はあ?マッサージの資格なんざありませんよ。多少自信はありまするが。儂は体力にはもう自信が無いですわい」
「いや。資格なんざ関係ないですよ。そりゃあお分かりでしょうが。しかし、ずいぶん落ち着いた声と、じいさんくさい話方しますねえ」
「だって、じいさんですから」
「はっ?またまたあ……。28でじいさんはないでしょう」
「はあ?あのう。もう一度お訊きしますが、どちらへおかけで?」
「あれっ。島珍さんじゃあないんですか?」
「島珍じゃありません。島爺です。還暦間近の」
「けっ。なんだ間違いかよっ。ジジイ、はっはっはっ」
ピッ!
失礼なやっちゃ。
自分で間違えておいてそれはないだろうが。
しかし、1日100万といったらどんな商売だ?
しかも免許なしでもマッサージ技術と体力があればよいらしい。
が、どうも年齢制限があるようだ。
うーむ。妄想学を駆使しても、どんな仕事かさっぱり予想がつかない(笑)。
しかし、1日8つ×3日かあ。
やるなあ。
そっちのお仕事も大変そうだ。