★占いシリーズを約1週間掲載しましたが、すこしとんがりコーン気味ですので、今夜はしっとり妄想小説でも考えてみっぺ。
とはいえ、ひねジイのことですからかなり曲がった記事になるかも知らんぞなもし。
妄想小説『雪が……』
「あらっ。雪が……」
嵯峨を過ぎたあたりから、雲行きはいよいよあやしくなってきてはいた。
私はその声に、ふと窓の外を見た。
いや、まだ降ってはいない。
と、女は私の肩に軽く触れた。
一瞬、ほんのり藤袴と柑橘系の匂いがした。
女を見た。
うりざね顔というのだろうか。イメージにある京女。目は切れ長というよりも二重瞼のパッチリした大きな目。私はその瞳に吸い込また。
少し長めの細い指に、私の白髪が摘まれていた。
女はそれをテッシュにくるみ、袂に入れる。
と、片目を少し閉じながらさらりと向きを変え、列車の奥の方に歩いて行く。
私はその腰あたりの動きに釘付けになりながらも、先ほどの藤袴の香りを必死で反芻していた。
「亀岡。亀岡ー」
車内アナウンスが聞こえてくる。
大江の鬼に会いに来たのに、先に女神が会いに来てくれたようだ。
左奥には、雪化粧した霊仙ヶ山が見える。
その姿と、今しがたの女の姿態が重なっている。
おわり
ダメだ、こりゃ。
ジジイに艶っぽいのは難しい。