人が文明らしいものを築き、小国家的なものが作られはじめると、原始時代の占い師は神、または神の語り部としての地位を確立し、やがて占いが専業となり、特権を持つようになる。
その力は場合によっては、小国家の長よりも大きくなってくる。
こうした役割をはたす人を日本語ではシャーマンと呼んでいる。シャーマンとは、ツングース族(東シベリアに住む民族で、DNA比較から朝鮮民族の祖先との説あり)のシャマンに由来する言葉だ。
いまでもツングース族のオロチョン族やエベンキ族には、シャマンが存在している。
職能人、あるいは神の代理としてのシャマンだが、日本本土なら巫女(姫巫女→→ひめみこ→ひみこ)、沖縄なら聞得大君やらノロに相当するだろう。
しばらくすると、占いは失われた能力を残していることには関係がなくなり、技術、知力が重きをなしてくるようになる。
その代表が安倍晴明だ。
種々の文献を調べては、あるいは発明して占いを行うようになる。
安倍晴明の行ったのは、実は陰陽道でも鬼を動かす力でもない。
それは天文学であり、医学であり、薬学であり、また心理学である。
陰陽道はその表向きの武器でしかなかった。
ただし、この武器は非常に効率よく、うまく使えば政治をも左右した。
つまり、行きたくない相手には方違い(かたたがえ:風水のようなもので、日により行ってはいけない方角がある)を理由に断ることもできるし、何らかの決断をせねばならぬ時の理由にもなる。また、敵対する相手を追い落とすこともできる。
この陰陽道を司る部署は長い間日本の中枢にあり、それが無くなったのは明治に入ってからである。
陰陽道を司る陰陽寮は約1200年続き、現在の気象庁になったと記憶している(間違いならご指摘ください)。
シャーマンは東ユーラシア特有の存在という説が主流のようだが、そうではあるまい。
メソポタミア、エジプトで天体を観測して洪水を予測したり、マヤにおいて驚異的に天文学を発展させたのも、またインディアンという非常に不本意な名前をつけられてしまった、マヤ族を含む北米の先住民もまた、天体や自然に従って生きてきた。
それらを観測、予測し、またそれに従うよう伝える者がいたであろう。
シャーマンの神がかり状態は、ある観方をすれば正常とは言えないものだ。
また、身体的に特殊な、あるいはハンディキャップをもつ人間がなっていた可能性がある。
ギリシャ神話、あるいは古事記、あるいは日本ではあまり馴染みがないがオージンの出てくる北欧神話に、それを匂わす記述がある。
また、中米におけるキノコなどによる中毒による幻覚、麻などを燻した煙による幻覚の影響もあるかも知れない。
さらに、ジサイ(船旅をする時に、海の神をなだめるために船にくくりつけられる人柱→航海が無事にすめば神扱いだが、難波でもしたなら殺される)のような、極限状態での脳の異常によるものかも知れない。 いずれにせよ、占い師は特殊な能力よりは極限状態の経験やら技術、知識へと変化していく。
“古代から20世紀末までの占い:下”につづく