まだ人類が言葉というものを発明、あるいはうまく利用できなかった頃。
おそらく現代の人類が失ってしまったであろう能力により、幾多の 危機を乗り越えてきたに違いない。
それは嗅覚であったり聴覚であったり、あるいは磁気を感じる能力であったり、気圧や湿度の変化を感じとる能力であったろう。
こうした能力により山火事から逃れ、野獣から身を伏せ、宇宙線や地震などに身を構え、嵐や洪水の前に洞穴や高台に逃げ災害から身を守っていたことだろう。
犬は、人間の何万倍もの嗅覚があると言われている。
もし、ある人間が犬と同じくらいの嗅覚を持っていたとしたなら、それは神になるだろう。
原始時代において、人間がまだ人間同士のいざこざに煩わされなかった頃ならば、あるいはこのような動物的感覚を持っている人間が残っていたかも知れない。
次のシリーズで述べる予定だが、古代においてはなんらかのハンディキャップを持った人間が占いに深く関わってくる。
これは著名な話だが、見たものを一瞬で覚えてしまう人間が稀に存在する。また、モーツァルトのように、一度聴いただけで楽譜を書ける人間もいる。日本では、美空ひばりの話はよく知られている。彼女は楽譜は読めなかったらしいが、1、2度曲を聴いただけで、次はそれを自分で歌えたという。
普通は(何を普通というかは非常に難しいが、例えば1000人中999人くらいとしよう)、曲を1、2度聴いただけで、それを口づさめないだろうし、一瞬で数十の数字を覚えることはできないだろう(一般に人間が一瞬で記憶できる数は8個が限度と言われている)。
しかし、こうした能力を持つ人には、逆に非常に欠けているところもある。
一瞬で数十の数字を記憶できる人は、一桁の足し算引き算さえ満足にできなかった。また、モーツァルトには生活能力があったかどうか、はなはだ疑問の残るところがある。美空ひばりに関しては先に述べた通りだ。
話がそれてしまった。
原始時代の人間に戻ろう。
動物の能力を残した一部の人間は、その部族を救い繁栄を支えることになる。
おそらく、そうした過去の能力を持つ人間は、一般生活能力に乏しかったろう。
彼らは、その教えにより神に近い存在となり、部族からの捧げものにより食を得るようになっていく。
これが、占い師の源だろう。
しかし、古代にもっぱら占いにより崇められ、それによって生活を営むことができた占い師は、現代に近づくにつれ、中身も人間の能力、素質も大きく様変わりする。
特に21世紀の日本の占いは、こうした能力とは全く関係のないものに変質する。
これについては、次回、ならび次々回としよう。
つづく