【小説】ネズミーランド騒動記 その2(伝説と新神話) | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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それは突然やって来た。
いや、風神岡という名前からも分かるように、もともと風の強い場所ではあった。
老人の話では、その昔風神が岡を通り、家という家、畑という畑をすべて持って行ってしまい、残ったのは岩山だけになったという。
家を持っていかれるのは飛ばされてしまうことだと分かるだろうが、畑を持っていかれるという意味は分かりにくいだろうから、簡単に説明しておこう。


畑とは、土に野菜やら穀物を植えているところ。都会育ちの方々の多くは、そんなイメージしかないだろう。

畑とは、山野の木を切り開き、砂利を取り、草を抜き、そこに野菜やら穀物が育つよう酸素を入れるために丁寧に耕し、さらに肥料などで野菜穀物にあった土地に作りかえるものだ。
つまり、畑とは人によって作られた作品なのである。
この作品は、1年や2年ではできない。

が、極めて強い突風により表土がすべて吹き飛ばされてしまうことがある。


これを畑が飛ぶとか、持っていかれるという。

人が丹精込めて作った畑という作品が、もとの荒れ地に戻ってしまう。

これは、その年1年の不作とは比較しようのない甚大なダメージである。



その昔、風神岡には家を建てるなとの掟もあったらしい。



ネズミーランドは、そんな昔話の残る場所に建てられた。



大丈夫。

それは針小棒大の伝説。
それに、そんな突風はなんでもないですよ。このネズミーランドは、風速100メートルの風にだって耐えられますから。


それがネズミーランド側の言い分だったし、村役場でも年末年始に限らず餅のお裾分けに預かっているから、強いことは言えない。

いや、村役場の役人の中には親戚にネズミーランドの従業員もいたので、役場でも大丈夫、大丈夫を繰り返すばかりだった。



が、ついにその日が来た。



そう。伝説が甦り、安全という新神話が崩れ去る日が。




つづく
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★参考

風神岡は、現在は福神丘、またはウィズウィル・ヒルと名称変更しています。