【小説】ネズミーランド騒動記 その3(神話の崩壊) | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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台湾坊主と呼ばれる低気圧が、本州南岸をかすめながら太平洋を東北東へと進んでいた。

内陸の気圧配置が不安定となり、なま暖かい風が吹いていた龍神岡に黒雲が湧き出す。と、見る見るうちにそれはロウトのような足を地上に伸ばしてきた。

草が舞い、あたりのゴミが吸い上げられ、大きな渦を作っていく。

ロウトの先が地上に届いた。
車が、家が、その渦の中に吸い込まれていく。

ネズミーランドは、その直撃は避けられたが、意外なものが檻を破壊した。

空から象が降ってきたのである。

風速100メートルの風にもびくともしない、何があっても大丈夫という神話は、ここで消えた。

ネズミーランドの檻は飴のようにグニャリとし、そこからネズミが一斉に逃げ出したのだった。


いや、竜巻の直撃を受けなかったにも拘らず、その前に檻は壊れてしまっていたとの情報もあるが、ネズミーランドが破壊され、現在のようにおいそれと近づけなくなってしまったから、その真偽を確かめるすべはない。


このネズミーランドの檻が破壊され、ネズミが逃げ出したことは、あらかじめ予想された経過をたどり、村民ばかりか周囲の村々をも恐怖の谷へと突き落とすことになる。



つづく