【小説】ピエントロエフのサンタからのメール | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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つい今しがた、ピエントロエフでサンタ業を営むアンドロサンクス・ウラシミッテン・ハラシンショからメールが入った。

オイミヤコン村にも近いピエントロエフ村は、今朝の気温-32度。
数日前よりはずいぶん暖かくなったようだ。

それでも、鼻水つららで窒息しないように、マフラーをして寝るという。

今週末から快晴が続くため、木曜日あたりからは-50度を下回りそうだという。
オイミヤコン村ほどは寒くはないらしいが、かなりの寒さのようだ。

その彼にとって、一番楽しい時でも、また一番辛い時でもあるのがクリスマスである。

サンタ業で、ほぼ半年分の稼ぎをしなければならない。

確かに実入りはある。
ギリシャ正教徒しかいない村だが、最近はサンタも主役となりつつあるからだ。


ピエントロエフは、イルクーツクラットラビットの毛皮を加工し、クロテン毛皮に化けさせる仕事に追われている。





彼はそれを8万ルーブルで売る。
クロテン相場の半分以下だ。 もちろんイルクーツクラットラビットだと知れたら、その1割さえ入らない。
だから相手は決まっている。
東の島国に住むという連中だ。彼らは毛皮のことは何も分かっていない。
銭を持ってきてくれるサンタである。


サンタ業のピエントロエフにもサンタがいるのだ。
ただ注意しなければならないのは、この稼業がやつらに知られないようにすることだ。

ピエントロエフは商売が出来たときのルーブルとドルに、嬉しさと同時に背中に硬い冷たさを感じてしまう。
その感覚は妄想ではあるが、極めて現実味のある予感でもあるからだ。


刑事ー尾ーはなくなった。
が、それ以上のなにかに怯えてもいるのだった。
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