世界最高の包丁 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

しま爺の平成夜話+野草生活日記

世間を少しばかり斜めから見てしまうしま爺さんの短編小説や随筆集などなど
★写真をクリックすると、解像度アップした画像になります。

この包丁は世界に2つとない、なんでも切れる包丁です。


100円ショップで買えるようながさつな箱から、師はそれを取り出した。

いや、取り出すような動きをした。

というのは、私にはそれが見えなかったからだ。



いいか、ここに一番硬いと言われているダイヤモンドがある。


やはり、私には見えない。



ダイヤモンドでさえこの通り。
師は両手の掌を少し曲げて、私に差しだす。


が、私に見えたのは、しわだらけの掌だけだった。






じっちゃん。

カボチャかたくって切れないや。
切って!

隣の部屋から、小学校に上がったばかりくらいの子どもが顔をのぞかせた。




師は台所から錆びた包丁を取り出し、顔を真っ赤にしながらカボチャと格闘している。





なんで世界一切れる包丁を使わないのかなあ。


ふと、そう思った。