何かが変わってきたことを感じ始めている。
同時に、自分が走馬灯を見ていたことに気付き始めている。
さらに、自分を直視できる勇気も、落胆と怒りと自己嫌悪の中に、少しずつ芽生えているのを感じている証だ。
ただ、まだそれを声にするまでにはなっていない。
が、あわてることはない。
これからも続いたであろう泥沼に比べたなら、まだ救われたと考えた方がよいだろう。
どんな人間でも、正常な状態ならば、自分に嘘を突き通させることはつらいだろう。
すぐに目を覚まして全力疾走することは危険だ。
ユダ探しなどという言葉を使っているのだから。
霊能力があるとかいうもののほとんどは、そんな力など信じてはいない。
だから、躍起になって隠しカメラだの過去の資料だのをひっくり返し、穴が開くほどそれらを見て物理的な証拠探しをする。
いかに霊能力とやらがないかを、自分からさらけ出している。
ここまで来ると、もはや喜劇の世界だ。
しかし、本人は、いたって真剣にトリックを考えている。
