
今日は年に数回しかない神の髪が現れるとのお告げがあり、神を信じない不届き者の私も、かような有難いことを見逃す手はないと思い、えっちらえっちらはるばる約束の地へと旅立ったのである。
かの地に着くと、空はいつになくのんびりとしており、プードルが泳いでいた。

おーい、雲よ。
と心の中で叫んだが、果たして磐城平まで行くかどうかは教えてくれなかった。

しばらくすると、それらしい光景が現れてきた。

神の髪のほつれ毛である。
やがてそれは鮮明な光る白い糸となり、バックの青と明瞭な線を作った。

神の髪は、地上にも降り注ぐ。
いや、正確には、地上に降り注ぐことはよくあるが、天空に長い光る髪を見せることはあまりない。


神がもう一度、ひときわ明るく髪を振り乱した。

地上の住人は何もなかったかのように、秋風に身を任せている。

一雨来たのでしばし雨宿りした。その後、神はその髪の毛を惜しげもなく見せてくれたのだった。
言葉は不要。
神の髪の毛は美しかった。




振り返ると、夫婦雲がチュウをしていた。

そこでひとつ浮かんだ。
足引きの
草枕して
垂乳根の
ちゅうちゅうするや
あをによければ
うーん、我ながら惚れ惚れする神への讃歌である。