[田舎小説]お江戸八百八町 ★東京 その2 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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忠次は、つい今しがた行ったばかりにもかかわらず、また廁に行きくなっていた。
いくら三河時代からお仕えしといるとはいえ、呼び出しをした相手は関ケ原に勝ち征夷大将軍となった、今や名実ともに天下人である。


難癖をつけられて、いつ腹を切らねばならぬともかぎらない。
ましてや、殿のあの脱糞事件を知っているのは、自分を含めて片手に余る。
譜代がゆえに家康の裏側も知っている自分は、むしろ危険な存在に違いないと考えていたからだ。




おお、おう。よく参った。
まあ、そこでしばらく待っていろ。


家康は、枯れ葉のようなものを磨り潰している。







さて、今日はな。なぞなぞを考えたので、お主に解いて欲しくてな。


家康が曇った笑みを浮かべた。

忠次は、また廁へ行きたくなったが、下腹に力を入れて踏ん張った。




のう、忠次。
江戸はなぜ寂れていると思う?


いや、殿。お言葉ながら、殿が入られて以来、江戸は多いに栄えてござりまする。



たわけたことを申せ。城を離れれば1里も行かずに葦の原、どじょうなまずの棲む沼ばかりではないか。



忠次は、今度は返す言葉がない。

さらに、江戸には暴れものが住んでおる。
分かるかな?


暴れものにござりますか?

うん。そいつのおかげで困っておる。


えっ。殿を困らすほどの暴れものにござりまするか。
はて、さようなものがお江戸におりますやら。


と言って、忠次は膝が震え出したのを感じた。

やはり、拙者への難癖をつけたいのではあるまいか。



はて……。

かすれた声でそう言うのがやっとだったのだ。




毎年暴れるやつでな。










利根川にござりまするか。


うむ。
そうじゃ。あやつのおかげで、江戸は湖になってしまう。
せっかくの田畑も流されてしまう。



忠次は、膝の震えが止まっているのに気づいた。



で、なぞなぞとは、そのことなんだが。
のう、忠次。あの大水を止めるにはいかがしたらよいかのう。



ははっ。
高き堤を造るが賢明かと。



そうかのう。
堤を越える水が出たらなんとする?



ははっ。
信玄公の造られしごとき、逃げの原を造るべきかと。


なんほど。

しかし、逃げの原も越える水が湧いたならなんとする?



う、うーっ。


忠次は繋ぐ言葉が出なくなった。





簡単じゃよ。

利根川が無くなればよい。




はっ?!

忠次は家康の言葉の意味を測りかねて、口を半開きにした。



今度は、尻の穴までむずむずしてきたのだった。






江戸初期までは、利根川は江戸湾に注いでいた。
これを鬼怒川や小貝川の流れにつなげ、銚子から海へ注ぐようにしたのは家康のアイデアであろう。

その目的は軍事的なことも考えられるが、とにかく洪水による江戸の被災者は激減する。
こうして、湿地の広がる関東平野が田畑に変わっていき、江戸中期、江戸はロンドン、パリをしのぐ世界一の大都市へと発展して行ったのだった。

利根川の流れを変えた本当の思惑はわからないが、とにかく江戸からは災害が減り豊かになっていく。



一方、福島に代表される東北被災地はどうなのだろうか。

もうすぐ、1年半だ。

マスコミからは、復興がすでに終わったような雰囲気さえ感じてしまう。

まだ、始まってもいないのではないか?






今年の同窓会は宮城だ。

が、その日取りだと、どうも出られそうにない。

ごめんなさい。





★個人的な伝言板(ちいとせこいかな?)

バケ仲間へ

その前に、前のT氏の都合を見て、東京出張組だけのなにをしようとの話あり。
詳しくは、H氏またはKさんまで。
あるいは、テレパシー通信にて、こちらへ。


ではでは。


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