いくら三河時代からお仕えしといるとはいえ、呼び出しをした相手は関ケ原に勝ち征夷大将軍となった、今や名実ともに天下人である。
難癖をつけられて、いつ腹を切らねばならぬともかぎらない。
ましてや、殿のあの脱糞事件を知っているのは、自分を含めて片手に余る。
譜代がゆえに家康の裏側も知っている自分は、むしろ危険な存在に違いないと考えていたからだ。
おお、おう。よく参った。
まあ、そこでしばらく待っていろ。
家康は、枯れ葉のようなものを磨り潰している。
さて、今日はな。なぞなぞを考えたので、お主に解いて欲しくてな。
家康が曇った笑みを浮かべた。
忠次は、また廁へ行きたくなったが、下腹に力を入れて踏ん張った。
のう、忠次。
江戸はなぜ寂れていると思う?
いや、殿。お言葉ながら、殿が入られて以来、江戸は多いに栄えてござりまする。
たわけたことを申せ。城を離れれば1里も行かずに葦の原、どじょうなまずの棲む沼ばかりではないか。
忠次は、今度は返す言葉がない。
さらに、江戸には暴れものが住んでおる。
分かるかな?
暴れものにござりますか?
うん。そいつのおかげで困っておる。
えっ。殿を困らすほどの暴れものにござりまするか。
はて、さようなものがお江戸におりますやら。
と言って、忠次は膝が震え出したのを感じた。
やはり、拙者への難癖をつけたいのではあるまいか。
はて……。
かすれた声でそう言うのがやっとだったのだ。
毎年暴れるやつでな。
?
!
利根川にござりまするか。
うむ。
そうじゃ。あやつのおかげで、江戸は湖になってしまう。
せっかくの田畑も流されてしまう。
忠次は、膝の震えが止まっているのに気づいた。
で、なぞなぞとは、そのことなんだが。
のう、忠次。あの大水を止めるにはいかがしたらよいかのう。
ははっ。
高き堤を造るが賢明かと。
そうかのう。
堤を越える水が出たらなんとする?
ははっ。
信玄公の造られしごとき、逃げの原を造るべきかと。
なんほど。
しかし、逃げの原も越える水が湧いたならなんとする?
う、うーっ。
忠次は繋ぐ言葉が出なくなった。
簡単じゃよ。
利根川が無くなればよい。
はっ?!
忠次は家康の言葉の意味を測りかねて、口を半開きにした。
今度は、尻の穴までむずむずしてきたのだった。
★
江戸初期までは、利根川は江戸湾に注いでいた。
これを鬼怒川や小貝川の流れにつなげ、銚子から海へ注ぐようにしたのは家康のアイデアであろう。
その目的は軍事的なことも考えられるが、とにかく洪水による江戸の被災者は激減する。
こうして、湿地の広がる関東平野が田畑に変わっていき、江戸中期、江戸はロンドン、パリをしのぐ世界一の大都市へと発展して行ったのだった。
利根川の流れを変えた本当の思惑はわからないが、とにかく江戸からは災害が減り豊かになっていく。
一方、福島に代表される東北被災地はどうなのだろうか。
もうすぐ、1年半だ。
マスコミからは、復興がすでに終わったような雰囲気さえ感じてしまう。
まだ、始まってもいないのではないか?
★
今年の同窓会は宮城だ。
が、その日取りだと、どうも出られそうにない。
ごめんなさい。
★個人的な伝言板(ちいとせこいかな?)
バケ仲間へ
その前に、前のT氏の都合を見て、東京出張組だけのなにをしようとの話あり。
詳しくは、H氏またはKさんまで。
あるいは、テレパシー通信にて、こちらへ。
ではでは。
