[田舎小説]足柄天狗だネイホウ神奈川 その1 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

しま爺の平成夜話+野草生活日記

世間を少しばかり斜めから見てしまうしま爺さんの短編小説や随筆集などなど
★写真をクリックすると、解像度アップした画像になります。

久しぶりに石川町の駅に降り立った。

気のせいか、この前来たときより人がまばらに思えた。
陳は太めの身体全身に汗をかきながら、西門の前に立っていた。


山東生まれの僕だが、潮州の陳とはなぜか気があった。おそらくお互いにうまく広東語がしゃべれないからかも知れない。

今日は陳のおごりだという。ケチなあいつらしくないが、目的は分かっていた。
中山路の裏手にあるその店の通りには、観光客らしい人たちはいなかった。表通りに店を並べているそれとは違い、間口も狭くちょっと陰気臭い。

赤提灯をくぐると、薄暗い灯りの中から少し痩せ気味の青服が現れた。
スリットから青白い脚が覗く。


晩上好。
ハスキーな声だ。
愛珍が、かげろうの笑みで僕を見た。
また痩せたかな、と思った。

身体に似て細い笑みを浮かべたまま、愛珍が奥のテーブルへ導く。


陳が僕の脇腹を軽くつつく。不満なのだろう。僕に何か言わせたいのだ。



叔父さんは元気?
僕が訊く。


ええ、相変わらず。
今日は神戸に行ってるの。

そう。忙しそうだね。

あっ。
こいつ、前に紹介したかも知れないけど、同じ日本留学生の陳。


愛珍の切れ長の目が少し動く。
陳の額には、まだ汗が吹き出している。もちろんそれは、暑さだけのせいではないようだ。

潮州出身なのに、こんなやつもいるのだ。 そこが僕が好きな理由でもあるのだが。






★なぜかは知らないが、今の日本では中国人というと一塊のようなイメージで報道されている気がする。
違っていたら、私の勘違いだが。

しかし、今中国と呼ばれている国には、どんなに少なく見積っても50くらいの言語があり、同様に民族も多様だ。

行ったことはないが、メロンで有名なハミあたりは、青碧の美しい瞳を持った少女が多いし、お年寄りの香港人だと標準語は分からないだろうし、簡略漢字を読んで理解することもかなり難しい。

チベットに関しては、日中不平等報道協定と、裏方、パトロンの関係があるから、報道できない。

いや、報道できるのだか、それはチョモランマだの長江源流だの、高原の動植物だのに制限されている。

そんな美しいものしか報道しない。

また、国内でのストの実態・裏方に関しても、知らんぷりして流さないか流せない。


さらに、大陸に進出しましょうときたもんだ。


呆れますなあ。



あそこで生き残るには、日本人の常識では到底太刀打ち出来ません。

つまり、個人レベルではすべて失うのが関の山。


だいたい、給料が安いって言ってますがねえ……。


いや、これ以上書くとまた消されそう。


ここまでとしよう。