
前回は自然発生的な宗教、例えば大樹信仰であったり、奇岩や落下岩など磐信仰であったりと、自然物の中に人には触れられない力、今私たちが神とか天とか呼んでいるものをそこに見いだし、畏敬の対象になっていくところまででした。

大樹は霊を宿していると考え、信仰の対象である。

火山の噴火で飛来した石や、隕石など天から降ってきた石もまた神の使いである。
今回、神社や仏閣など人の手を介した信仰対象について見ていきます。
神社仏閣に行き、その建物などを見ると、多くの人は尊厳さと同時に、ある親近感を感じてしまいます。
この親近感は自分では意識しない感覚、フロイトに言わせればイドの世界の感覚です。この本人が自覚しない親近感こそが、多くの日本人が常時神社仏閣を訪れる理由のひとつなのです。
では、その無意識の親近感とは一体どこから生じるものでしょうか。
その前に、まずこの写真を見てください。


よくある鳥居、あるいは神社の裏にある主殿とその袖殿です。
まず気付くのは、その対称性でしょう。
人は対称なものに安定感を抱き易いのです。
さらに重要なことは、各所に1:√2の図形が取り入れられていることです。
多くの場合、それは横1に対して縦√2となります。
この比率こそが、私たちの多くが無意識に親近感を覚える理由なのです。
なぜなら、この比率は私たちに最も身近な比率に近いからです。
何かお分かりですか?
ええ、人の顔の比率です。
美人とされる女性などの顔の比率は、ほぼこの値になっています。
一番見ているものの形の比率に近い。
だから、親近感が湧くのは当然なのです。
鳥居などに限らず神社仏閣には、この1:√2が多様されています。
いくつか写真を載せますから、自分で探してみてください。



同じように、自然界の中にあるものにも、この1:√2の比率があるものには、親近感や可愛いという意識が働くことになります。

私が世界一の絵だと思っている(贋作か弟子の作品は両端の絵だろう。また、作者本人は気に入っていなくとも)ナショナル・ギャラリーの方の『岩窟の聖母』には、この比率が多様されています。
いかに魅力的に描くか、いかに醜く描くか。このあたりに関して、ダ・ヴィンチの深い計算があったことは、下絵などを見ても明らかでしょう。

ナショナル・ギャラリー(ロンドン)にある『岩窟の聖母』。ルーブルのものが宗教的に大変問題があるとされたため、書き直した作品。

ダ・ヴィンチの男の顔の割合を書き記したメモ。
ちなみに世界一有名と言われている、日本での通称『モナリザ』は、絵のサイズ自体がすでに1:√2です。

パソコンや携帯電話の液晶画面もこの割合に近いと思われますが、こちらは経済的理由がメインかも知れません。
今回の美学の講義はこれにて、終了します。
次回は、重元素アイソトープの寿命に関してです。
今回の内容をよく復習して、次回に備えてください。