こわい話 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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こわい話と言っても、怖い話や恐い話のことではない。
私が生まれ育った北関東では、「こわい」とは「疲れた」という意味である。
標準語では「こわい」が「疲れた」という意味ではないと知ったときの驚きは、マリリン・モンローのスカートが親切な風に踊ったときより驚いた。


わが田舎では「恐い」の意味に近い言葉は、「おっかない」が音便変化した「おっかねえ」である。間違っても「こわい」などとは言わない。町から来た子どもが恐怖映画を見て「ああ、こわい」とか言ったなら、八丈島に島流しなのであった。


疲れたという意味の「こわい」も、「こうぇー」と発音するのが正しい。


「疲れた」も意味は通じたが、それは肩たたき3回で治る程度の疲れであり、腰を伸ばしながら顔をしかめる疲れは「ああ、こうぇー」と発音するのが由緒ある表現なのである。
つまり、方言辞典などに載っている「こわい」=「疲れた」は、実は少し違っている。



「こわい」という言葉もあった。
これは標準語でも「おこわ(飯)」というような表現で使うこともあるが、「硬い」という意味だ。


例えば、着物の糊がこわいとか、今日の飯は水が足らなかったからこわいというような表現をする。


だから赤飯も「おごわ」などと言う。


手強いやこわもてするの「こわ」に近い、古い日本語だろう。



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