三太黒州の『ハポンならびにユーカラ国見聞録』 第3話 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

しま爺の平成夜話+野草生活日記

世間を少しばかり斜めから見てしまうしま爺さんの短編小説や随筆集などなど
★写真をクリックすると、解像度アップした画像になります。

……

さようなわけで、私は“江戸所払い”という罰を受け、このえ~え~ぞという島にあるユーカラ国にやって来た。
実は、ここに来ないで、ずっと江戸に居ることも可能であった。
というのは、“江戸所払い”とは言っても、そこを通り過ぎてはならないというわけではない。だから、常に旅支度の装いをしていれば、仮に役人の目に留まっても“いや、拙者は常陸の国から甲斐の国への旅の途中にて……”とか言って銀の2、3粒も握らせればお咎め無しだったからだ。

しかし、それはこの猿国人ならではの話。本国では中肉中背の私でさえ、ここでは見上げるほどの巨漢であったし、黒髪の猿ばかりが住むこの国では何かと目立ったため、彼らがよく言う“お目こぼし”とかいうものにありつくのは至難の業だった。また、役人もなかなか見て見ぬふりもしづらかったであろう。

ところで、私は江戸で“え~え~ぞ人”なるものを見たことがある。体は痩せ細ってはいるが、なぜか猿たちよりはるかに親近感を覚えた。
それは、そのときに見た長老の顔形は我らに似、髭が長く、ハポンの猿よりははるかに肌も白かったため、その長老にラウマ教国の北にすむ、フラマラン人を見ていたからかも知れない。
私の初恋の相手はフラマラン人だった。
いや、今の言葉は取り消そう。私は神以外には愛を感じたことはない。
そうだ。口が滑ってしまった。
違う、違う。口が勝手に思いもしないことを言った。
そうなのだ。私はこの国に来てからというもの、悪魔に取りつかれているのに相違あるまい。
勝手に口が動く。だから、私は言いたい。
相撲取りだなどと偽って吉原になど行ったこともないし、雨に打たれて体調が悪そうな夜鷹を介抱しながら開放したついでに、どんぶらこどんぶらこをしたこともないし、 猫の虱を取りますとか言いながら、太平洋という名前のご婦人と夜を共にしたこともない。
ましてや、赤毛とはあかのけ。あかぬけして男運が上がりますぞなどと言い、この赤毛を人知れぬところに結わえると効果てきめん。
しかしながら、これを人知れぬ場所に結わえるのは難しい。だから、拙者が結わえてつかわそう。などと言って、違うものを繋げたりしたことは断じてない。



たぶん、つづく。



はっ?

第1話、第2話はって?

あれっ?

書いてなかったかなあ。
しま爺の平成夜話-201112150732000.jpg