今年は心なしか明かり灯火のささやかにてぞある。かのおほなゐよりこの方、およそ明るきあるは暖かき便りのたへてなきにこそあれ。
どうえんしどあひは、あひもかわらずありなきをさはぎ、さらなるひとはこれを信じるも多かりき。とかひの働き盛りなるもまた昨日の値けふの値に一喜一憂せんとす。いはんやひな人の歯と髪の薄くなり腰をまげたるをや。
やまとたけるのつまの身を投げて舟の橋作れる所に住みしだじやうの一の臣なるは、道真ならぬ偽天神が後釜にて候。
どじやうは元来水に棲みしが、冬は水枯れたる川底の泥にもまた活きるものとなむ聞き侍りける。
かのどじやうは知らぬが、その親なるはととせの昔我の住みし長屋の隣に大なる館を構へ冬はすずしろなど干したる爺婆にてことさらに口のうへ目の下の高きにはあらぬご人にて候。
今もかかる姿にてすずしろの竹竿など結わえたるならあらまほしからむとぞ思ひ侍りける。
ただ、みんしやうたうなるあかどんぐりあおどんぐりのありやうはいかんとも口に入れるは難きことなり。
どんぐりの どじやうの川に 落ちぬ夜
こおろぎの 鳴かぬ霜月 過ぎにけり
夜待ちの 如意輪寒し 月明かり
