ごめんなさい。気を悪くされたら。
日本が世界に誇れる映画の筆頭。
2位との差は12馬身。

老夫婦が東京見物を兼ねて、子どもたちの家を訪ねることにした。


東京は華やかではあった。
が、ただそれだけだった。
息子たちも娘たちも、はるばる訪ねて来た老夫婦を邪魔者扱いする。


そんな二人を温かく迎えてくれたのが、亡き息子の嫁だった。

義父が言った。
“あんたも若いんだし、……”
と、その嫁がくったくのない笑みを見せて、こう言った。
“違うんです。私も本当はずるいんです”

老夫婦が、東京に来て初めて家族を得たのだった。
二人は疲れの中に爽やかさを残して東京を去って行く。

と、突然の不幸が二人を襲った。
老いた妻が、帰途途中で倒れ帰らぬ人となってしまったのである。

葬儀の席でも、実の子どもたちは機械的だった。
一人残された翁に、近所の人たちが声をかけて通り過ぎる。
“淋しくなりますねえ”
“はあ。あいつがいるときはうるさい……が、いなくなると淋しく……すなあ”
翁は海を見に、丘に登った。

瀬戸内の輝く海と空が目に痛い。
翁は誰にともなく言う。
“今日も暑くなりそうだ”
(遠くで船の汽笛が鳴る)
自分で思い出し思い出しあらすじを書いたが、なぜか目頭が熱くなってきた。
すべての俳優が主役だ。
独特のアングルは、フランス映画界では驚きと賞賛を持って授業でも取り上げられる。
いい映画である。

