本日は、“帰(けえ)ろうの非卑否”を記念しまして、長屋の大家さんに、これからの長屋に住んでいるジジババの心がけ、きまりについてお話いただきます。
では、天浮浪長屋の大家さん、よろしくお願いします。
ええでっか。
皆はん。まずは常識で考えておくれやす。
わては皆はんから1銭の家賃もいただておりまへんな。只で、この長屋を提供しとりますぅ。 これは皆はんもよぅご存知でんな。
はあ、そりゃ近くに作ったからくり屋敷へ入えるにゃ木戸銭をもろうておりますし、飛脚の荷物預かりには、形ばかりのおぜぜはいただいとりますぅ。
ほやけど、今どき、只で長屋に住めまふか。
この世知辛い世の中に、少しでもお役にたとう思うて、身銭を削ってご奉仕とりまふぅ。
それがなんでんねん。恩を仇で返すような方々が、ここんとこぎょうさんおりますわ。
やれ、雨漏りがするの、飯は出ないのかとかでんねん。
わてはね、精一杯皆さんに喜ばれるよう、木戸銭はちいといだだきまふが、人形町のからくり屋敷を移したり、只で長屋修繕もしとりますがな。
それがなんでやねん。
あろうことか、わてが寺社奉行と組んで悪さをしているんやろとかを、瓦版に流したりするお方までいやはりますな。
そげなことするお方は、長屋によう住まんでおくれやす。
仏の顔も三度まで言いよります。
わては仏はんやおまへんから、一度やらはりましたら出て行ってもらいまふ。
よろしゅうおますな。
ほな、そういうことで。
あっ、そいから、からくり屋敷で新しいもんやっとりますぅ。ぜひ来ておくれやす。
ほな、さいなら。