
エアコン本体にしろ、そのリモコンにしろ、現在ある電気部品の大部分にプリント基盤が使われている。
このプリント基盤とは、コードの代わりに基盤の上に細かい配線がなされたものと考えていいだろう。
このコード代わりの配線を担っているのが、金である。
つまり、プリント基盤とは大まかな考え方をすれば、金線を使った配線のある板と考えていいだろう。
では、なぜそんなところに金を使うのだろうか。
それは金の特殊な性質が、実にこうした細かい配線に便利だからだ。
まず金は、空気中や水の中では、全くと言ってよいほど変化しない。
つまり、鉄や銅などのように錆びたりしない。
さらに、金は最も電気抵抗が少ない金属と言ってもよい。
電気抵抗が少ないということは、途中で電力が減りにくいから、少ない電力で足りるということだ。
さらに、抵抗が少ないから熱などの発生も少ない。
もうひとつ重要な性質がある。
金属の中では、最も延ばすことができる。
つまり、少ない材料で長い配線を作ることができる。
同時に、柔らかく加工しやすいという利点もある。
このように、美術工芸品、装飾品に限らず、工業的にも大変優れた金属である金だが、ひとつ大きな問題がある。
それは、非常に少ない金属ということだ。
信じられかないかも知れないが、人類が生まれてから現在までに掘り起こした金は、全世界のものを集めても、せいぜいオリンピックプール3杯分くらいしかないらしい。
これは、夏場に日本人が1日で飲むビールの量(重さではなくカサ)にも満たないだろう。
しかし、ここに驚くべきデータがある。
都市鉱山という言葉をご存知だろうか。
機械などに使われ、廃棄物となっているものの中にある資源のことだ。
金の都市鉱山埋蔵量は、全世界で40000トンくらいらしいが、なんと日本にはそのうちの16%にあたる、7000トン近くがあると言われている。
私たちは、日本は資源に乏しいと教え込まれてきた。
確かに、鉄やニッケルなどは、世界レベルでみたならほとんどないと言ってよい。
しかし、こんなちっぽけな国に、次世代の重要金属でもある金を、世界の1割以上埋蔵していることにもなる。
日本における都市鉱山埋蔵量の割合の多さは、金だけではない。
銀は世界の2割以上。
インジウムはなんと6割以上。
スズ、タンタル、プラチナなども世界5指に入る都市鉱山であるようだ。
今はどうかしらないが、私の知り合いにも、プリント基盤から金を取出している人がいた。
ところで、最近の金の高騰は異常だ。
1グラムあたり、5000円近くにまでなっている。
ダイアモンドも金もシンジケートが動かしている。
テレビや新聞解説などでは、政情不安になると価値変化の少ない金が買われるからだ、との説明があったりする。
が、日本ではシンジケートのことは放送させないようだ。
これは自主規制なのだろうか。
いずれにせよ、普通のサラリーマンや農家、個人営業の方が、フォーナインインゴットをキログラム単位で持っていたりはしないだろうから、金地金自体が上下しようが、生活にはまず関係があるまい。
問題は、それを利用した商売にひっかかったりしないかどうかだろう。