
馬の背を分ける雨の中に飛び込んだ。
と、すでに黒い穴が目の前に迫っていた。
ぬかるみの下り坂トンネルに、時速100キロメートルくらいで飛び込んだのだ。
と、その先にあるはずの道がない。
いや、あった。
が、それはほとんど直角の左カーブを描いていた。
急ブレーキをかけると同時に、ハンドルを切った。
いや、そうしたと思った時には、体が45度傾き目の前の壁がゆっくりと回転した。
1秒が10秒になる。
ゴーン。
どこからともなく鐘の音がした。
家族が、田舎にいる親が、学生仲間が、静かに僕を見ている。
僕は声を出そうとした。
が、喉が動かない。
集まってきた親戚、仲間たちが、寂しい顔で僕を覗いている。
が、彼らも何も言わない。
ただただ、寂しい思いだけが伝わってきている。
ゴーン。
また遠くで鐘が鳴った。
どうも僕は、違う世界に来てしまったようだった。
悲しむ顔の仲間たちと、一人横たわる僕を、僕は見下ろしている。
が、それも米粒くらいの大きさになっていき、もうすぐ見えなくなりそうだ。