
またまた例の雑木林に行ってみた。

山不如帰は聞こえなかったし、鰹もまだではあるが、まさに目に青葉である。
私はしばし我を忘れ、おそらく0点何%かは酸素濃度が濃い空気を胸一杯吸い込んだ。
がさりがさりと、まだ枯れ葉の残る笹を踏み分け、子犬の視線を張り巡らす。
おっ。
茜(赤根)ではないか。
まだ芽を出して数日だろう。

昔から使われてきた染料材料だが、今は特殊な民芸品くらいにしか使われていまい。
またしばらく目を皿にする。
と、……。
私は歓喜した。
なんと十二単(ジュウニヒトエ)ではないか。
野生のこれを見るのは、高校時代以来かも知れない。

やはりこの雑木林には住宅などを建てずに、ずっと残って欲しいものだ。
この林を後にして、別の林に足を伸ばす。
江戸を切り開いた太田道灌が、文学に目覚めるきっかけを作ってくれたという逸話のある山吹がみごとなカドミウム色を出していた。

先々週には芽を出したばかりの銀蘭が、咲き始めている。

おおっ。
金蘭だ。
これも久しぶりである。

いささか小ぶりだが、鳴子百合もちらりほらりと咲き出した。

こんなことをしていると、クヌギの木にぶつかったり、モグラの穴に足を取られるなどは日常茶飯事である。