この頃、思うことこぞ文月よりこのかたあさましき迷留のあまたさぶらひていとわづらはしくなり侍りけり。 さあるゆゑはいかにぞあるやと問ふにいささか思ひあたること無きにしもあらずがかばかりのことにはあらぬべしとも思ひさぶらひけり。 さてさあるほどにいよいよわろしこと侍りてわれなるなをかたり候らはむ輩のいできぬ。 なんじゃうさあることこそすれ。 ひとのよのむじゃうの為せる業ならむとぞ思ひけるもさあるはかこつなむありけるとぞ思ひける。 またをとめをみななどにけさうして語るはげにけし。そのけしきけうとくいとあさましきとなむ思ふ。みづから車を転がしこれを追うに似たりと思ひ侍りけり。