【成人向け昔話】一寸ポチ | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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裏の畑でポチが泣く……。
ああ、可哀想に。
また、タブラ姫にいじめられたんだ。



こらっ。滅多なことを言うでない。
そんなことを言ったのが知れたら、長屋五人組全員がおしおきされちまう。
言いたいことがあったら、裏山に穴でも掘って、そこで叫んでくれ。


長屋の主が、若造をたしなめます。




去年の暮れまでは、その長屋に定吉という、貧乏長屋には珍しく顔の整った若者が住んでいました。


定吉には、少し変わったところがあります。


それは、伝説にある仏様のそれと同じように、普段は隠れてしまいそうな一寸足らずのなにが、なんかの調子に二寸、三寸、いやいや五寸、六寸と大きくなり、一尺近くまでなるのです。


長屋連中は定吉を、一寸ポチと呼んでいましたが。

これは、一寸ぽっちしかないのになあ、ということから付けられたあだ名です。


この噂が、妖しい噂の絶えない、タブラ姫の耳に届かないはずがありませんでした。



ほどなく定吉は、お城に召し挙げられてしまったのです。




タブラ姫は、定吉の一寸が一尺になっていくのが楽しくて楽しくて、毎夜毎夜、小槌で叩いたり、自ら擦ったりしています。

やがて、夕暮れ近くになると、定吉の泣き声が城内にも聞こえるようになりした。

いや、風に乗ってその声はお城の外でも聞こえたのです。








三年後、定吉は腎虚となり世を去りました。





長屋の連中は手厚く葬るとともに、そのお墓の近くに深い穴を掘って叫びました。




姫様の船は小町船~。
姫様の船は太平洋~。

姫様の船は小町船~。

姫様の船は太平洋~。






春になりました。

あの穴の近くには大きな桜の木があって、毎年お墓参りに訪れた人たちの目を楽しませてくれます。


その年の春も、桜が満開になり、花びらが風に煽られヒラヒラと舞い始めました。


と、その花びら一枚一枚が、なにかをつぶやいています。







姫様の船は小町船~。

姫様の船は太平洋~。


姫様の船は小町船~。

姫様の船は太平洋~。






花びらは、風に乗って、姫を迎えようとしていた隣のお国のお殿様のところにも流れていったそうです。







めでたし、めでたし。



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