うさぎとカメ | しま爺の平成夜話+野草生活日記

しま爺の平成夜話+野草生活日記

世間を少しばかり斜めから見てしまうしま爺さんの短編小説や随筆集などなど
★写真をクリックすると、解像度アップした画像になります。

歩くの速い?遅い?ブログネタ:歩くの速い?遅い? 参加中





むかし、むかし……。

いや、今回は同じ突っ込みを入れさせやしませんよ。


はい。

むかし、むかしっていうのは、ひい祖父さんのひい祖父さんの、そのまたひい祖父さんを123回繰り返した昔のことだ。

ひい祖父さんは、私より70歳と7ヶ月13日年上だから、あとは計算してみりゃわかる。


で、場所はっていうと、天竺の都から東に連なる沼地を越え、さらにワニの戯れる大河を渡り、そのまた東の海から、エラブさんに誘われて北へ北へと海の川に流されて着いたところにある、やたらと礼儀が正しいエビスたちの住む島のことじゃ。


これだけ正確に時代と地域を特定したのだから、子どものくせにやたらと突っ込みを入れるあやつも、今回ばかりはぐうの音も出まいて。


もっと正確を記すと、昨日食べた納豆を長襦袢の裾にくっつけたまま、今朝方33個のカリントウを一気にほおばっていたトラの小町婆さんの、裏山での出来事だった。





ここで、話が昔に戻るぞ。


トラの小町婆さんの裏山には、カラカッタちゅう名前のウサギと、どん兵衛という名のカメがいて、その日は朝から自慢話をしていた。




俺は、ワニの背中を、999回連続飛びできるんだぜ。

カラカッタが言う。




ふーん。
おりは、竜宮城まで1日でたどり着けるわな。
どん兵衛も負けてはいない。



俺は、月で餅をつけるぜ。

おりは、万年生きられる。



俺は、卒業式で必ず歌われるぞ。ただ、知らぬやつは、ウサギ“美味し”と勘違いしているが。



おりの歌なんかは、世界中のみんなに歌われてるわなあ。




ほう。

もしもしカメよ、カメさんよは、それほど有名か?



ちゃうねん。
田舎者のおめえさんも知ってっぺ。


タートルズ。



はあ?



なんだ、知らねえのけ。
“家去ったで~”とか“へい、柔道”、“今人(いまじん)”って知らねえが。






なーんていう話をしていたが、かけっこ勝負をすることになった。



カラカッタは、ついつい横丁のお姉さんの流し目が気になり、ちょいと一杯のつもりが朝まで飲んで、気づいたときには、カメのゴール寸前だった。

ウサギは必死で駆け出した。



が、カメの方が片足分早くゴールしたようだ。



ウサギの歩みは、カメよりずっと速い。

が、のろいカメのゴール時刻には間に合わなかった。

つまり、遅くなってしまった。



速かったが、同時に遅かった。






と、速いの反対語が遅いではないということを言いたいがために、ひどく遠回りをしてみた。



こんなことをする私も、ウサギに似ているかもしれない。