自分の息子さえ、抱いたところなど見たことがない。
そんな翁(いや、記憶では爺ちゃんだったが、実際には、せいぜい還暦を少し過ぎたくらいだったろう)の背中に私はおんぶされていた。
大平は偉い。
岸はダメだ。
翁が言った。
私には、もちろん意味が分からなかった。
戦後まもなく、昭和天皇は、全国に御幸された。
その町にも御幸なされた。
また、ロシアの某かも訪れている。
その中に、若き大平さんがいたようだ。
その方が亡くなったとき、私は、親戚も知らない、あるあばら家に寝泊まりしていた。
が、その筋と思われる方が部屋のドアを叩き、悲報を伝えてくれた。
世の中、そんなこともある。
※これはフィクションであり、文中に出てくるお方と偶然にも一致する事柄には、一切関わりがございません。